ギターを弾く女

ヨハネス・フェルメール《ギターを弾く女》1672年頃
ギターを弾く女The Guitar Player
1672年頃
油彩、カンヴァス、53.0 × 46.3 cm
ケンウッド・ハウス(ロンドン)

この作品のデータ

作者ヨハネス・フェルメール同じ作家の作品 12点
制作年1672年頃
時代バロック・ロココ同じ時代の作品 37点
様式オランダ黄金時代同じ様式の作品 16点
種別絵画
技法・素材油彩、カンヴァス
所蔵ケンウッド・ハウスロンドン
有名度★★★
何がすごいのか

フェルメールの死後、この絵は妻の手でパン屋へのツケの支払いに充てられました。それから約300年後の1974年にはロンドンの館から盗まれ、同じ年の5月に教会の墓地で見つかっています。画面の少女は弦をはじいている最中の姿で、ぼかして描いた弦が音の振動を表しています。

見どころ

画面の外を見る笑顔

少女は首をかしげて笑い、画面の外の誰かに目を向けています。控えめな表情が多い初期の作品とは対照的で、視線の先に親しい男性がいることをほのめかしているとされます。首元の真珠は、緑とピンクの帯の上に白の点を重ねるだけの簡素な描き方です。

震えるギターの弦

手にしているのは、当時歌の伴奏楽器として広まり始めたバロック・ギターです。サウンドホールの飾りは絵具の厚塗りで盛り上げ、縁の白黒の象牙細工も細かく描いています。弦の一部だけ焦点をずらし、いま鳴っている音を表しました。

壁に掛かった風景画

背後の風景画は、美術史家グレゴール・ウェーバーによってピーテル・ファン・アッシュの作品と特定されています。フェルメールが画商として扱っていた商品の一つだったと推測されています。木の枝と少女の巻き髪の形が似ていることから、少女を自然の美にたとえた理想の女性像と読む説があります。

パン代になり競売で70ギルダー

フェルメールはこの絵を亡くなるまで手元に置いていました。没後、妻カタリーナは『手紙を書く婦人と召使』とともに、この絵をパン代のツケの支払いに充てます。ツケは617ギルダーで、10人以上の子を育てたフェルメール家のパン代の3〜4年分にあたりました。

1696年5月16日、アムステルダムのディシウス競売では21点のフェルメール作品が一度に売られました。この絵は「ギターを弾く若い女、大変よいできばえ」として出品され、70ギルダーで落札されています。この日の最高値は200ギルダーの『デルフト眺望』でした。

その後は英国のパーマストン子爵家などを経て、1888年に美術商アグニューの手に渡ります。翌年までにエドワード・ギネスが買い取り、1927年の死去にともなって遺贈コレクションとして国に寄贈されました。

額縁が見つかり、絵は墓地へ

1974年の盗難では、犯人はシャッターと鉄格子付きの窓を壊して侵入し、電話線を切って逃げました。ケンウッド・ハウスはその2年前にもグアルディの絵2点を盗まれ、警備を強めたばかりでした。まもなく館から半マイルほどの場所で、ガラスが割れた額縁が見つかります。

ロンドンのラジオ局には、アイルランド訛りの男から要求が届きました。カンヴァスの切れ端と、公表されていない事実を並べた手紙が添えられていたため、本物の犯人からとみなされています。ロンドン警視庁は要求に応じないと声明を出しました。5月7日に墓地で見つかった絵は、新聞紙に包まれ紐で縛られ、墓石に立てかけられていました。

釣り合いをわざと崩した晩年の構図

1660年代のフェルメールは、均衡と調和のとれた構図を突き詰めました。この絵では少女を左端に寄せて腕の一部を画面の外に出し、光を右から当てています。左右の密度を極端に変えた配置で、目が自然に少女とギターへ向かいます。右側のカーテンや青いテーブルクロス、三冊の本は、その偏りを和らげる役目です。

毛皮で縁取られた黄色い上着は妻カタリーナの持ち物とされ、『真珠の首飾りの女』などにも同じものが描かれています。美術史家アーサー・K・ウィーロックは、この絵を晩年様式をもっともよく示す作品と評しました。死ぬまで手放さなかった絵なので、注文主の要望ではなく、彼自身の関心から新しい表現を試したと推察されています。

読んだらクイズ

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よくある疑問

『ギターを弾く女』はどこにある?

ロンドン北部ハムステッドのケンウッド・ハウスにあります。初代アイヴァー伯爵エドワード・ギネスの遺贈コレクションの一点で、1927年に国へ寄贈されて以来この館が管理・展示しています。

盗まれたことがある?

あります。1974年2月23日にケンウッド・ハウスから盗まれ、犯人はIRAのプライス姉妹を北アイルランドへ移すよう要求しました。絵は同年5月7日、ロンドンのセント・バーソロミュー・ザ・グレート教会の墓地で、目立った傷のない状態で見つかりました。

モデルは誰?

フェルメールの長女マリアとする説があります。ただし肖像画ではなく、特定の人物を描かない顔の絵、トローニーとして描かれたと考えられています。美術史家エリーゼ・グッドマンは、最新の流行を身につけた上流階級の娘と見ています。

フィラデルフィア美術館の『ギターを弾く女』とは何が違う?

フィラデルフィア美術館には、構図がほぼ同じ同名の作品があります。1927年にケンウッド版が知られるまではフィラデルフィア版が真作とされていましたが、その後は状態のよいケンウッド版を真作、フィラデルフィア版を模写とみるのが通説です。元アムステルダム国立美術館の修復担当アリー・ウォーラートは、どちらもフェルメール自身の作だと主張しています。

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ヨハネス・フェルメールのほかの作品

《牛乳を注ぐ女》 《デルフト眺望》 《真珠の首飾りの女》 《合奏》 《真珠の耳飾りの少女》 《絵画芸術》 《地理学者》 《天文学者》 《ヴァージナルの前に座る若い女》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

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