合奏

ヨハネス・フェルメール《合奏》1664年頃
合奏The Concert
1664年頃
油彩、カンヴァス、72.5 × 64.7 cm
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館(ボストン)

この作品のデータ

作者ヨハネス・フェルメール同じ作家の作品 12点
制作年1664年頃
時代バロック・ロココ同じ時代の作品 37点
様式オランダ黄金時代同じ様式の作品 16点
種別絵画
技法・素材油彩、カンヴァス
所蔵イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館ボストン
有名度★★★
何がすごいのか

1990年3月18日の未明、警察官を装った2人組がボストンの美術館に入り込み、この絵を額から外して持ち去りました。それきり行方はわかっておらず、回収されていない美術品のなかで最も価値が高いとされています。描かれているのは、チェンバロとリュートと歌で音楽を合わせる3人です。

見どころ

壁に掛かった娼館の絵

右の壁の絵は、ディルク・ファン・バビューレンが1622年頃に描いた『取り持ち女』で、娼館の場面です。この絵はフェルメールの義母マーリア・ティンスの持ち物でした。フェルメールは6年ほど後とみられる『ヴァージナルの前に座る女』の背景にも、同じ絵を描き入れています。

チェンバロを弾く女性

左で横顔を見せる若い女性が、チェンバロを弾いています。開いたふたの内側には、理想郷アルカディアの明るい風景が描かれています。左から差す光は、真珠の首飾りや白い絹のスカートの上で光っています。

床に置かれたガンバ

手前の床には、弦楽器のヴィオラ・ダ・ガンバが置かれています。この楽器も、絵の主題が音楽であることを強めています。白と黒の大理石の床は単純な模様ですが、当時は高価なぜいたく品でした。

鑑定家を頼らずに買った絵

制作されたのは1660年代半ばと考えられていますが、記録に初めて現れるのは1780年です。この年、アムステルダムの競売に出され、315フローリンで売られました。その後はパリやロンドンの競売を何度も渡り歩いています。

1892年、パリのオテル・ドゥルオーで、批評家テオフィル・トレの遺品が競売にかけられました。トレはフェルメールの評価を復活させた立役者で、その旧蔵品という点でもこの絵は特別でした。ボストンの収集家イザベラ・スチュワート・ガードナーは、代理人を通じて2万9,000フランで落札します。彼女にとって最初の大きな買い物で、専門家の助けを借りずに選んだ1枚でした。1903年、ガードナーがボストンに開いた美術館で、この絵は展示されます。

81分で消えた13点

盗難の夜、犯人は「オランダの間」でレンブラントの『ガリラヤの海の嵐』などをカンヴァスごと額から切り取りました。『合奏』は額から外され、中国の古代の青銅器も持ち去られています。別の部屋からはドガの素描5点とマネの『トルトニ亭にて』が盗まれ、被害はあわせて13点になりました。

この絵の盗難は、実際の事件より前に物語になっています。1964年のテレビドラマ『ヒッチコック・アワー』の一話が、この絵を盗む話でした。トレイシー・シュヴァリエの小説『真珠の耳飾りの少女』(1999年)では、フェルメールが本作と『真珠の耳飾りの少女』を同じ時期に描いています。

誘惑の場面か、音楽の場面か

フェルメールの時代のオランダ絵画では、音楽は恋や誘惑と結びつけられることがありました。背景に娼館の絵があるので、この絵も性愛をほのめかしていると読む研究者がいます。一方で3人は互いを見ず、演奏だけに集中しています。立って歌う女性は、楽譜を手に、仲間のために拍子を取っています。

背を向けた男性は、肩から飾り帯を掛け、剣を下げています。ガードナー美術館は、この帯を市民の自警団の一員のしるしと説明しています。チェンバロのふたの穏やかな風景と、左の壁の荒々しい風景画も対になっています。娼館の絵も同じように、目の前の家庭の場面との対比として置かれたのかもしれません。

読んだらクイズ

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よくある疑問

『合奏』はどこにある?

所蔵はボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館です。ただし1990年に同館の「オランダの間」から盗まれ、行方がわかっていません。そのため実物を見ることはできません。美術館には、盗まれた作品の空の額が、戻る日を待つしるしとして掛けられたままになっています。

『合奏』はどうやって盗まれた?

1990年3月18日の未明、警察官の制服を着た2人組が「騒ぎの通報で来た」と言って通用口から入りました。2人は警備員を手錠で縛って地下に置き、81分後に13点の作品を持って立ち去りました。この絵は切り取られず、額から外されて持ち去られています。

『合奏』にはいくらの価値がある?

評価額は2億ドルを超えるとされ、英語版Wikipediaは2億5,000万ドルという見積もりを挙げています。盗まれたまま回収されていない美術品のなかで、最も価値が高い作品と考えられています。

ほかにも盗まれたフェルメール作品はある?

フェルメールの作品は1970年代以降たびたび盗まれましたが、その多くは見つかっています。行方がわからないままなのは、この『合奏』だけです。

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ヨハネス・フェルメールのほかの作品

《牛乳を注ぐ女》 《デルフト眺望》 《真珠の首飾りの女》 《真珠の耳飾りの少女》 《絵画芸術》 《地理学者》 《天文学者》 《ヴァージナルの前に座る若い女》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

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