牛乳を注ぐ女

ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》1657年頃
牛乳を注ぐ女The Milkmaid
1657年頃
油彩、カンヴァス
アムステルダム国立美術館(アムステルダム)
何がすごいのか

背景の壁には、X線解析で見つかった塗りつぶし済みの大きな地図と洗濯物籠が下絵に描かれていました。フェルメールは高価なラピスラズリ由来のウルトラマリンを惜しみなく使っています。地味な台所仕事の場面に見えて、足温器やタイルの絵柄には性的な寓意が隠されているとする研究者もいます。

見どころ

注がれる一筋の牛乳

画面は左下のテーブルから女性の頭部へ向かう三角形の構図で描かれ、二本の斜線が女性の右手首で交差しています。この構成が、注がれている牛乳へ鑑賞者の視線を集めています。

壁のタイルと足温器

壁の床際にはデルフト陶器のタイルが並び、左にはキューピッドの絵柄があります。その手前に置かれた四角い足温器とあわせて、性的な寓意を秘めているという解釈があります。壁の白さは当時の画家にとって挑戦的な表現でした。

割れた窓ガラス

画面左の窓は列ごとに違いをつけて描かれ、下から4枚目のガラスには割れ目があり、そこから漏れる光まで表現されています。すぐ下のガラス表面には引っかき傷も描き込まれています。

台所仕事に隠された寓意

当時のオランダ絵画では、台所や市場を舞台にしたメイドの絵は性愛を想起させる図像として描かれることが多くありました。メイドが男性の欲望をかきたてる存在として描かれる伝統のなかで、フェルメールはこの女性を愛情のこもった気品ある存在として扱っています。それでもなお、キューピッドのタイルや口の広い水差しなど、伝統的な性愛の寓意は画面のなかに残されています。

高価な顔料を惜しみなく使う

フェルメールはこの作品で、天然石ラピスラズリを原料とする高価なウルトラマリンを多用しました。当時の他の画家は青色によりありふれた安価なアズライトを使うのが普通でしたが、フェルメールはウルトラマリンと鉛スズを原料とするイエローを主要な顔料に据えています。背景の白い壁も、当時の画家にとっては挑戦的な表現とされていました。

第二次世界大戦を挟んだ渡米

1939年、『牛乳を注ぐ女』はニューヨーク万国博覧会に出品されていました。会期中に第二次世界大戦が勃発してオランダがドイツに占領されたため、絵はそのままアメリカに留め置かれることになりました。この間、ミシガン州のデトロイト美術館で展示されたほか、1944年末にはニューヨークのメトロポリタン美術館でも公開されています。

よくある疑問

『牛乳を注ぐ女』はどこにある?

アムステルダムの国立美術館が所蔵しています。美術館自身が「疑問の余地なく当館でもっとも魅力的な作品の一つ」としている代表作です。

描かれているのは本当に牛の乳搾りをする女性?

いいえ。実際に描かれているのは台所仕事を担う召使いか家政の女中で、牛の乳搾りをする労働者ではありません。「ミルクメイド」という呼び名は後世に定着したもので、当初は「キッチンメイド」や単に「メイド」と呼ばれていました。

地図や洗濯物籠が見当たらないのはなぜ?

下絵の段階では女性の背後に大きな地図が、スカートの後ろに洗濯物籠が描かれていましたが、完成作では塗りつぶされています。籠についてはアムステルダム国立美術館は裁縫箱だとしており、X線解析で存在が確認されました。

カメラ・オブスクラを使って描かれた?

見解が分かれています。遠近感の矛盾からカメラ・オブスクラの使用を指摘する研究者がいる一方、研究者ウォルター・リートケはキャンバスに残る小さな穴を、チョークを塗った糸で遠近構図を決めた鋲の跡だとして、使用に否定的です。

基本データ

作者
ヨハネス・フェルメールJohannes Vermeer
制作年
1657年頃
種別
絵画
技法・素材
油彩、カンヴァス
様式
オランダ黄金時代の絵画
所蔵
アムステルダム国立美術館(アムステルダム)

ヨハネス・フェルメールのほかの作品

《デルフト眺望》 《真珠の首飾りの女》 《真珠の耳飾りの少女》 《絵画芸術》 《地理学者》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

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