アカデミーは1712年からヴァトーに入会審査用の作品提出を求めましたが、提出まで5年もかかりました。完成した絵のためにアカデミーは「雅宴画」という新しいジャンルを作ったほどです。長年、遠くの島が目的地とされてきましたが、1961年の研究以降は、すでにシテール島にいて名残惜しく船に乗り込む場面と解釈されています。
見どころ
ヴィーナス像とアモール
画面右のヴィーナス像は、石柱の根元にアモールの矢筒が置かれています。この島に上陸したというヴィーナス崇拝を表しています。
腰を上げる恋人たち
ヴィーナス像の左では、紳士が女性の手を取って立ち上がらせようとしています。その左の2人はすでに出発の身支度をしています。
船に向かう人々とアモール
画面左では人々がすでに船に並び、小さなアモールが頭上を舞っています。ルーベンス風の牧歌的な風景が、名残惜しい恋人たちの心情を映しています。
5年越しの入会作品
王立絵画彫刻アカデミーは1712年からヴァトーに、正会員となるための資格作品の提出を求めていました。ヴァトーはあまり乗り気ではなかったのか、提出を先延ばしにしていました。1717年にようやく提出されたのが本作です。
題名が二転三転した経緯
アカデミーの議事録では当初『シテール島の巡礼』と題名がつけられましたが、後に「雅宴画」と分類されました。しかしこの題名は広く知られず、ベルリン版を複製したタルディウの版画に付けられた『シテール島への船出』という題名が、その後2世紀にわたって通用することになりました。
画家自身の孤独な生涯
ヴァトーは若くして結核にかかり、生涯を通じて病身でした。愛人がいたという記録も残っていません。雅やかな恋の情景を描き続けた画家自身は、静かな私生活を送っていたとされています。
よくある疑問
- 『シテール島の巡礼』はどこにある?
-
パリのルーヴル美術館が所蔵しています。1717年にアカデミーに受理されて以来、一貫してルーヴル美術館の所蔵です。
- ベルリンにある似た絵と何が違う?
-
ベルリンのシャルロッテンブルク宮殿にも、ヴァトーが1718〜19年ごろに描いた類似作があります。ルーヴル版のレプリカではなく、若さと喜びをより強く表した独立した作品とされています。
- シテール島とは何?
-
ギリシャ神話で愛の女神ヴィーナス(アフロディーテ)が上陸したとされる島です。独身者が巡礼すれば必ず良き伴侶が得られるという、愛と至福の島として古くから画家たちの主題になってきました。
- 描かれている場所はシテール島?それとも出発前?
-
以前は絵の場所はシテール島ではなく、遠方に見える島が目的地のシテール島だとする解釈が一般的でした。しかし1961年の美術史家マイケル・リヴィの論文以降、描かれている場所自体がシテール島で、人々は名残惜しく帰路につこうとしているという解釈が認められています。
基本データ
- 作者
- アントワーヌ・ヴァトーJean-Antoine Watteau
- 制作年
- 1717年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 129 × 194 cm
- 様式
- ロココ
- 所蔵
- ルーヴル美術館(パリ)
- 展示室
- バロック・ロココ
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル
