サルバトール・ムンディ

レオナルド・ダ・ヴィンチ《サルバトール・ムンディ》1499〜1510年頃
サルバトール・ムンディSalvator Mundi
1499〜1510年頃
油彩、クルミ板、65.7 × 45.7 cm
個人蔵(2017年の落札後は非公開)

この作品のデータ

作者レオナルド・ダ・ヴィンチ同じ作家の作品 9点
制作年1499〜1510年頃
時代ルネサンス同じ時代の作品 58点
様式盛期ルネサンス同じ様式の作品 22点
種別絵画
技法・素材油彩、クルミ板
所蔵個人蔵2017年の落札後は非公開
有名度★★★
何がすごいのか

1958年の競売では弟子の作とされ、わずか45ポンドで売れた絵です。2005年に1,175ドルで買われて修復され、レオナルドの作として2017年に4億5031万2500ドルで落札され、美術品の落札額の最高記録を塗り替えました。ところが落札後は一度も一般公開されていません。

見どころ

祝福する右手

向かって左で指を立てる右手は、祝福のしぐさです。修復中の赤外線写真で、親指が最初はもっと立っていた描き直しの跡が見つかりました。写すだけの模写では起きにくい変更で、真筆とみる根拠のひとつです。

ゆがまない水晶球

左手に載せた透明な球は、天球を表すとされます。本物の水晶の球なら向こう側の衣は拡大され、逆さに見えるはずですが、ここではほとんどゆがまずに描かれています。わざと省いたとみる研究者もいれば、レオナルドらしくないと疑う研究者もいます。

ぼかした顔と巻き毛

手前の右手はくっきり描かれ、奥にある顔は輪郭がやわらかくぼけています。レオナルドが手稿で研究していたピントの奥行きを絵に応用したと、研究者マーティン・ケンプは見ています。ただし顔と髪は、過去の洗浄で表面が特にすり減った部分でもあります。

王の絵から45ポンドの絵へ

制作は1500年頃とされ、フランス王ルイ12世のために描かれたとみる説があります。依頼主はほかにイザベラ・デステなども候補に挙がり、確定していません。弟子や追随者による模写や変奏は約30点あり、レオナルドの原画が存在した手がかりとされてきました。

17世紀にはイングランド王チャールズ1世の王室コレクションの目録に載り、のちにバッキンガム公の家系に渡りました。1763年に競売にかけられたあと、行方がわからなくなります。1900年にイギリスの収集家が買ったとみられる絵は、過去の修復で傷み、弟子ルイーニの作とされていました。1958年の売却時には、別の弟子ボルトラッフィオの作とされています。

7つに割れた板の修復

2005年、ニューオーリンズの競売に「レオナルド・ダ・ヴィンチにならって」という題で出た絵を、美術商ロバート・サイモンらが買い取りました。厚い上塗りに覆われ、裏打ちの板を外すと絵は7つに割れました。修復を担当したダイアン・モデスティーニは途中で真筆だと確信し、比べるために『モナ・リザ』も調べています。

修復の手が大きく入ったため、懐疑的な研究者からは「モデスティーニの傑作」と皮肉られました。2008年にナショナル・ギャラリーが専門家5人に意見を求めた結果は、賛成1、保留3、反対1です。それでも同館は2011〜2012年の展覧会で真筆として展示しました。2013年には美術商イヴ・ブーヴィエが8000万ドルで買い、ロシアの富豪ドミトリー・リボロフレフに1億2750万ドルで売っています。リボロフレフは後に、この上乗せを詐欺だとして訴えました。

ルーヴルに並ばなかった理由

落札後、ルーヴル・アブダビでの展示が予定されましたが、2018年9月に無期限で延期されました。同じ年、絵はひそかにパリへ運ばれ、ルーヴルの依頼で調査されました。2019年秋に始まるルーヴル美術館のレオナルド展に出る見込みでした。

しかし所有者側は『モナ・リザ』の隣に掛けるよう求め、警備の都合でそれはかないませんでした。絵は展覧会に出ないままサウジアラビアへ戻っています。ルーヴルが理由を明かさなかったため、帰属への疑いが原因ではないかという見方も出ました。2021年にはプラド美術館の展覧会カタログが、本作をレオナルドが認めて監督した工房作に分類しています。

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よくある疑問

『サルバトール・ムンディ』はどこにある?

2017年の落札後、所在は公表されておらず、一度も一般公開されていません。落札したのはサウジアラビアのバドル王子で、アブダビの文化観光局がルーヴル・アブダビに展示するための購入と説明されました。一方で、実際の買い手はサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子だと報じられています。2020年後半まで皇太子のヨットに掛けられ、その後はサウジアラビア国内の非公表の場所へ移されたとされます。

何が描かれている?

青いルネサンス風の衣をまとったイエス・キリストの半身像です。右手を上げて祝福し、左手に透明な水晶の球を持っています。題名はラテン語で「世界の救世主」という意味です。

本当にダ・ヴィンチが描いたの?

ロンドンのナショナル・ギャラリーは2011年に真筆として展示し、ルーヴル美術館が2019年に用意した調査の冊子も真筆と結論づけました。反対に、メトロポリタン美術館のカルメン・バンバッハは大部分を弟子ボルトラッフィオの筆とみています。修復が大がかりで判断しにくいという指摘もあり、真筆説と工房作説が並び立っています。

いくらで売れた?

2017年11月15日、ニューヨークのクリスティーズで、手数料込み4億5031万2500ドル(当時のレートで約508億円)で落札されました。2015年のピカソ『アルジェの女たち(バージョンO)』の1億7940万ドルを抜き、美術品の落札額として史上最高になりました。

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レオナルド・ダ・ヴィンチのほかの作品

《受胎告知》 《岩窟の聖母》 《最後の晩餐》 《白貂を抱く貴婦人》 《ウィトルウィウス的人体図》 《ラ・ベル・フェロニエール》 《モナ・リザ》

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