ウィトルウィウス的人体図

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ウィトルウィウス的人体図》1485〜1490年頃
ウィトルウィウス的人体図Vitruvian Man
1485〜1490年頃
ペンとインク、紙、34.4 × 25.5 cm
アカデミア美術館(ヴェネツィア)
何がすごいのか

世界でもっとも有名な絵の一つですが、常設展示はされていません。紙の作品のため、アカデミア美術館で時折公開されるのみです。円はへそを中心にしていますが、正方形はへそを中心にしていません。ウィトルウィウスの原典にない、レオナルド独自の工夫です。

見どころ

円と正方形に内接する人体

両腕両脚を広げた男性の裸体像が、外周の正方形と真円に内接する構図で描かれています。円は精神的な存在を、正方形は物質的な存在を象徴しているという見解もあります。

重ねられた二つの姿勢

同じ人体の両手脚が、異なる二つの位置で重ねて描かれています。腕を横に広げた長さと身長が等しいという、ウィトルウィウスの理論を視覚化したものです。

鏡文字の書き込み

手稿の下部には鏡文字で「ウィトルウィウスの著作に従って描いた男性人体図の習作である」と記されています。レオナルドは日常的にこの書き方でメモを残しました。

友人の建築書との関わり

ウィトルウィウスの著作は、アルベルティをはじめルネサンス期の建築家に大きな影響を与えました。レオナルドと交流のあった建築家フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニの手稿にも、同様のウィトルウィウス的人体図が描かれています。この手稿はレオナルド自身が所蔵していました。

ボッシの手を経て美術館へ

この手稿は18世紀から19世紀のイタリア人画家・著述家ジュゼッペ・ボッシの所有となりました。ボッシは1811年、この図に関する論文を、友人の彫刻家アントニオ・カノーヴァへの献辞とともに出版しています。ボッシが1815年に死去すると、アカデミア美術館がイラストとともに手稿を入手しました。

1ユーロ硬貨から企業ロゴまで

この図はイタリアの1ユーロ硬貨のデザインに採用されているほか、macOSのアクセシビリティアイコンやGNOMEのデスクトップインターフェースにも使われています。日本ではNTTドコモの決済サービス「iD」の初代ロゴマークに採用されていました。

よくある疑問

『ウィトルウィウス的人体図』はどこにある?

ヴェネツィアのアカデミア美術館が所蔵していますが、常設展示はされていません。紙に描かれた作品のため、同館所蔵の他の紙作品と同様、時折しか公開されません。

何が描かれている?

古代ローマの建築家ウィトルウィウスの著作『建築論』の記述をもとに、両手脚を異なる位置で重ねた男性の裸体が、外周の正方形と真円に内接する構図で描かれています。

なぜ正方形と円が描かれている?

ウィトルウィウスは、人が仰向けに横たわり両手両脚を広げると、へそを中心にした円に指先とつま先が内接し、同じ人体から正方形も見いだせると述べました。レオナルドの円はへそを中心にしていますが、正方形はへそを中心にしておらず、原典にはない、解剖学的により正確な独自の工夫です。

なぜ医療のシンボルに使われる?

人体の均整と調和を視覚化した図であることから、20世紀以降に医学関連の団体や企業が広くシンボルとして採用してきました。アメリカ、サウジアラビア、インド、ドイツなどでは医療の専門技術を示すイメージとして受け入れられています。

基本データ

制作年
1485〜1490年頃
種別
素描
技法・素材
ペンとインク、紙
寸法
34.4 × 25.5 cm
様式
イタリア・ルネサンス
所蔵
アカデミア美術館(ヴェネツィア)

レオナルド・ダ・ヴィンチのほかの作品

《受胎告知》 《岩窟の聖母》 《最後の晩餐》 《白貂を抱く貴婦人》 《モナ・リザ》

出典・画像について

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