
バッカスの果物籠には、はじけたザクロと腐ったリンゴが紛れ込み、若さの儚さを暗示しています。モデルは弟子で恋人だったマリオ・ミンニーティか、それとも鏡を見て描いた自画像か。ライバル画家がそう主張し、二人は生涯互いを嫌い合いました。
見どころ
誘うまなざし
バッカスに扮した少年は、鑑賞者に向かって意味ありげな視線を送っています。ふっくらとしていながら筋肉質な身体つきが、官能的な雰囲気を強めています。
差し出されるワイン
左手に持った浅いゴブレットにはワインが満たされ、鑑賞者を自分の方へ差し出しています。指先で衣服の引きひもを弄ぶ仕草が、くつろいだ雰囲気を作っています。
腐りかけた果物籠
手前の石のテーブルに置かれた籠には、ザクロが弾け、リンゴが傷んだ状態で描かれています。若さや快楽がやがて衰えることを示すヴァニタス(虚栄)の主題です。
デル・モンテ枢機卿のもとで
カラヴァッジョは1596年、最初の重要な後援者だったデル・モンテ枢機卿の住居マダーマ宮に移り住み、以後5年間その客人となりました。枢機卿は古代神話の寓意的な絵を好み、本作のほかに『メデューサ』も依頼しています。両作品はのちに枢機卿からメディチ家へ贈られ、それ以来フィレンツェにあります。
モデルをめぐる証言
ライバル画家ジョヴァンニ・バッリオーネは、カラヴァッジョが制作中に自分の前へ鏡を置いていたと証言し、本作の人物は自画像だと主張しました。バッリオーネはカラヴァッジョを嫌い、辛辣な伝記まで書いた人物です。二人の対立は嫉妬によるものだったとも考えられています。
先に描かれた『病めるバッカス』
カラヴァッジョは1593年ごろ、ボルゲーゼ家のために『病めるバッカス』と呼ばれる別のバッカス像も描いています。黄疸のような肌色で、鑑賞者から身をそらした姿勢が特徴です。強い明暗を対比させるテネブリズムへの関心は、この頃からすでに見られます。
よくある疑問
- 『バッカス』はどこにある?
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イタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。デル・モンテ枢機卿からメディチ家に贈られて以来、ずっとフィレンツェにあります。
- モデルは誰?
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弟子で恋人でもあったマリオ・ミンニーティだとする説と、カラヴァッジョ自身の自画像だとする説があります。ライバル画家ジョヴァンニ・バッリオーネは、カラヴァッジョが鏡を見ながら自分を描いたと主張しましたが、確証はありません。
- 果物籠にはどんな意味がある?
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はじけたザクロと腐りかけたリンゴは、若さや快楽がやがて衰えることを示すヴァニタス(虚栄)の象徴だと解釈されています。
- 『病めるバッカス』とは別の作品?
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はい、別の作品です。『病めるバッカス』は1593年ごろにボルゲーゼ家のために描かれた先行作で、ローマのボルゲーゼ美術館にあります。黄疸のような肌色で、鑑賞者から身をそらした姿勢が特徴です。
基本データ
- 作者
- ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオCaravaggio
- 制作年
- 1596年頃
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 95 × 85 cm
- 様式
- バロック絵画
- 所蔵
- ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
- 展示室
- ルネサンス
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオのほかの作品
《果物籠を持つ少年》 《ナルキッソス (カラヴァッジョ)》 《メドゥーサの首 (カラヴァッジョ)》 《聖マタイの召命》
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル