長年、中央で自分を指すひげの男がマタイだと考えられてきましたが、1980年代から画面左端でうつむく若者こそマタイという説が唱えられ、日本ではこちらが主流になっています。キリストの手の仕草は、ミケランジェロの『アダムの創造』から着想を得たとされています。
見どころ
キリストとペトロの指差す手
画面右側から裸足で古代風の衣装をまとったキリストとペトロが現れ、2人とも右手でマタイを指し示しています。光も右側から差し込み、カラヴァッジョの特徴である斜光線を作り出しています。
自分を指すひげの男
テーブルの中央でコインを数えていたひげの男が、自分を指し示すような仕草を見せます。伝統的にはこの人物がマタイとされてきました。テーブルには帳簿や筆記用具、集めた金の袋が描かれています。
光が当たらない若者
画面左端で顔を金に近づけ、右手で金を数えている若者がいます。光が当たらず悲嘆に沈んだ様子で描かれており、1980年代以降、この若者こそマタイではないかという見解が唱えられています。
決まらなかった礼拝堂装飾
コンタレッリ礼拝堂は、1565年にマッテオ・コンタレッリ枢機卿が自身の墓所として権利を得た場所です。当初依頼された画家ムツィアーノは装飾に手をつけないまま没し、後任のカヴァリエル・ダルピーノも天井画だけを残して依頼を中断しました。1599年になってようやくカラヴァッジョに『聖マタイの召命』と『聖マタイの殉教』の2点が依頼され、当時のローマでは異例なことに、フレスコ画ではなく大きなキャンバス画として制作されています。
コンタレッリの詳細な指示書
依頼主のコンタレッリ枢機卿は、礼拝堂の図像について詳細な指示書を残していました。収税人が使う机や帳簿、金を描き、召命に応じて立ち上がろうとするマタイの身振りに画家の腕前を示すよう求める内容です。カラヴァッジョはこの指示に沿って、机の上に帳簿と筆記用具、金の入った袋を描き込みました。
居酒屋の伊達男たち
マタイの周囲に座る人物たちは、カラヴァッジョの別の作品『女占い師』や『トランプ詐欺師』にも登場するローマの伊達男たちと同じ顔ぶれです。羽飾りの帽子をかぶった若者は、画家の友人マリオ・ミンニーティだと考えられています。美術史家ヴァルター・フリードレンダーは、当世風の衣装をまとう俗世界と、古代風の衣装のキリストとペトロが表す聖なる世界を、手の描写によって融合させたことがこの作品の狙いだったと指摘しています。
よくある疑問
- 『聖マタイの召命』はどこにある?
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イタリア・ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会、コンタレッリ礼拝堂の祭壇に向かって左側にあります。
- マタイは誰?
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長らく中央のひげの男がマタイだと考えられてきましたが、1980年代からドイツの研究者アンドレアス・プラターらが、画面左端の若者こそマタイだと主張し始めました。日本でも宮下規久郎らがこの見解を支持し主流になっていますが、イタリアでは今もひげの男とする見方が一般的です。
- 何が描かれている場面?
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「マタイによる福音書」9章9節にある、収税所で働くマタイにイエス・キリストが声をかけ、マタイがそれに応じて従っていく場面です。マタイはこの後4人の福音書記者の1人となり、税理士や会計士の守護聖人になりました。
- なぜカラヴァッジョの出世作と言われる?
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教会の礼拝堂を飾る公的な仕事としては初めての委嘱作品で、美術史上ではバロック美術への扉を開いた記念碑的作品とされています。カラヴァッジョにとってはこれが初の大作キャンバス画でもありました。
基本データ
- 作者
- ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオCaravaggio
- 制作年
- 1599〜1600年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、キャンバス
- 寸法
- 322 × 340 cm
- 所蔵
- サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会(ローマ)
- 展示室
- バロック・ロココ
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオのほかの作品
《バッカス》 《果物籠を持つ少年》 《ナルキッソス (カラヴァッジョ)》 《メドゥーサの首 (カラヴァッジョ)》
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(CC0)。元ファイル
