
1312年に亡くなった伯爵の埋葬に、聖アウグスティヌスと聖ステファノが天から降りてきて自ら遺体を埋葬したという伝説を描いています。手前の少年はグレコの息子で、ポケットのハンカチには画家の本名と息子の生年が記されています。地面も空もない画面に、超自然的な光景が広がっています。
見どころ
画面上部の天界とキリスト
光り輝く白い衣のキリストを頂点に、聖母マリアとバプテスマのヨハネが三角形を作る構図です。正教会のイコンによく見られる伝統的な構図で、周囲には使徒や聖人、当時存命だったスペイン王フェリペ2世の姿もあるとされています。
遺体を抱く2人の聖人
黄金と真紅の長衣をまとった聖アウグスティヌスと聖ステファノが、甲冑姿の伯爵の亡骸を丁重に抱きかかえています。周囲の黒い喪服には金色の飾りが施され、儀礼的な雰囲気を強めています。
署名を持つ少年
画面左下で2人の聖人を指差しているのはグレコの息子ホルヘ・マヌエルとされています。ポケットのハンカチには画家の本名「ドメニコス・テオトコプーロス」の署名と、息子の生年1578年が記されています。
伝説の伯爵と教会への遺産
オルガス伯ルイスは死後に伯爵位を追贈された、正義感に満ちた騎士として知られていました。信心深い篤志家でもあり、自らの教区教会だったサント・トメ教会の拡張と内装のために多額の遺産を残しています。この絵はその遺産への敬意を込め、教会の礼拝堂を飾るために描かれました。
トレドの著名人たちの肖像画
完成した1588年には早くも評判になり、多くの人がこの絵のためにオルガスを訪れるようになったと伝えられています。グレコは自分を高く評価してくれた聖職者や法学者、詩人、学者たちをこの作品に描き込み、敬意を表したと考えられています。墓所の改装計画を進めた司祭ヌニェス自身も、右端で祈祷文を読む人物として描かれています。
ビザンティンかルネサンスか
この構図がビザンティン美術の「聖母マリアの永眠」のイコンに由来するという見方がある一方、美術史家ハロルド・ウェゼイはこれを否定し、初期イタリア・ルネサンスのマニエリスムやティントレット、ティツィアーノの作品との類似を指摘しています。どちらが正しいかは、今も研究者の間で見解が分かれています。
よくある疑問
- 『オルガス伯の埋葬』はどこにある?
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スペイン・トレドのサント・トメ教会にあります。聖母マリア礼拝堂のために、教会司祭アンドレス・ヌニェスの依頼で描かれました。
- どんな伝説を描いている?
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1312年に亡くなったオルガス首長ドン・ゴンサロ・ルイスの埋葬の場面です。伝説によれば、信心深い篤志家だったルイスが埋葬される際、聖ステファノと聖アウグスティヌスが天国から降臨し、参列者の目の前で手ずから彼を埋葬したとされています。
- 参列者は実在の人物?
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はい。描かれている16世紀の服装をした参列者たちは、当時のトレドで社会的に著名だった人物とされています。完成当時、この絵が評判になったのも、生き生きと描かれた著名人たちの肖像だったことが大きな理由でした。
- なぜグレコの最高傑作と言われる?
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それまでの作品にあったローマ風・ヴェネツィア風の様式やモチーフの影響が見られず、グレコが独自の作風を確立した最初の作品と見なされているためです。天界と現世を対比させる構図がグレコの表現手法をもっとも明確に示しているとする評価があります。
基本データ
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル