最後の晩餐

レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》1495〜1498年
最後の晩餐The Last Supper
1495〜1498年
テンペラ、壁画、420 × 910 cm
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院(ミラノ)
何がすごいのか

レオナルドが3年で仕上げた、数少ない完成作。壁画なのにフレスコで描かなかったせいで生前から剥がれはじめ、扉で穴を開けられ、馬小屋にされ、爆撃を受けてなお残った。「裏切り者がいる」と告げた瞬間の12人の動揺を、手の形だけで描き分けている

見どころ

消失点はキリストのこめかみ

天井と壁の線をたどると、中央のキリストの右こめかみ一点に集まります。修復の洗浄でここに釘の跡が見つかりました。釘から糸を張って直線を引いたと考えられています。部屋のすべてがキリストに向かって収束する構図です。

ユダだけが顔に影、手に袋

それまでの『最後の晩餐』はユダを一人だけテーブルの手前に座らせて区別しました。レオナルドは12人を同じ側に並べ、光輪も描きません。代わりにユダ(左から4人目)の顔に影を入れ、手に銀貨の袋を握らせています。

指を1本立てるトマス

キリストの右隣、大ヤコブの背後から顔だけを出しているのがトマスです。立てた人差し指は「裏切り者は一人だけですか」と問う仕草と解釈されています。弟子たちの感情は顔より手で表現されています。

12人を3人ずつ4組に分けた

キリストを中心に、弟子たちは3人一組の4グループに分かれています。左右2組ずつがほぼ同じ幅で並び、背景の壁の分割がそれをさらにはっきりさせています。キリスト自身は三角形の構図で中央に置かれ、各グループは台形の構図でそれを囲みます。遠近法、背景の明るさ、視線、手の向き、配色のすべてが中央の一人に注目を集めるように組まれています。

描かれている場面は、福音書にある「あなたがたのうちの一人が私を裏切る」とキリストが告げた直後です。左端のバルトロマイは聞き取ろうと立ち上がり、アンデレは両手を上げて驚き、ペトロは身を乗り出してヨハネに耳打ちし、右端の3人は「今、何とおっしゃったのか」と顔を見合わせています。

フレスコを使わなかった理由

フレスコは漆喰が乾ききる8時間ほどのあいだに描き切る必要があり、重ね塗りも描き直しもできません。レオナルドは白黒で陰影をつけてから色を重ねる描き方を多用したため、この制約を嫌い、乾いた漆喰に薄い膜を作ってその上にテンペラで描きました。この方法は失敗し、ミラノの湿った気候と食堂の湯気が絵を侵食しました。

500年間の受難と20年の修復

16世紀から19世紀にかけて5回の大がかりな修復が記録されていますが、ニカワや樹脂の塗布は汚れを吸い寄せて画面を黒ずませ、18世紀の大規模な補筆はレオナルドの意図をわからなくし、19世紀には壁ごと剥がそうとして亀裂が走りました。17世紀には絵の下部中央に台所への扉が開けられ、その部分は完全に失われています。

1977年から1999年にかけて、修復家ピニン・ブランビッラが一人で20年以上をかけて洗浄だけの修復を行いました。後世の加筆が取り除かれ、消失点の釘跡、魚料理、キリストの口が開いていたこと、背景の壁にタペストリーが掛かっていたことが新たにわかりました。一方で、大ヤコブの体のようにオリジナルの絵具がほとんど残っていない箇所もあります。

よくある疑問

『最後の晩餐』はどこにある?

イタリア・ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂の壁に直接描かれています。持ち運べる絵ではなく、見学は完全予約制で1回15分程度、1グループ25人までに制限されています。教会とあわせて世界遺産に登録されています。

なぜこんなに傷んでいるの?

壁画の常道であるフレスコ(生乾きの漆喰に描く技法)を使わず、乾いた壁の上にテンペラで描いたためです。重ね塗りをしたかったレオナルドの選択でしたが湿気に弱く、完成から20年足らずの1510年頃にはもう剥離が始まっていたと記録されています。その後も扉の設置、馬小屋への転用、洪水、1943年の空爆を経ています。

キリストの隣にいるのは女性?

定説では使徒ヨハネです。中性的な顔立ちと小説『ダ・ヴィンチ・コード』の影響でマグダラのマリアではないかという説が広まりましたが、若い男性を中性的に描くのはこの作品に限らずレオナルドによく見られる画風です。

テーブルの上には何が並んでいる?

20世紀末の修復で、大皿に載っているのは魚料理だと判明しました。ほかにパンのような丸い食べ物、レモンかオレンジと思われる果物、塩壺らしき容器、ナイフ(フォークはない)、ワイングラス13個が確認できます。

基本データ

制作年
1495〜1498年
種別
絵画
技法・素材
テンペラ、壁画
寸法
420 × 910 cm
様式
ルネサンス
所蔵
サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院(ミラノ)

レオナルド・ダ・ヴィンチのほかの作品

《受胎告知》 《岩窟の聖母》 《白貂を抱く貴婦人》 《ウィトルウィウス的人体図》 《モナ・リザ》

出典・画像について

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