
キリスト教の絵ばかりだった時代に、異教の女神を裸で、しかも大作で描いた絵。首は長すぎ、左肩は解剖学的にありえない角度ですが、美しく見せるためにわざとそうしています。修道士サヴォナローラが「虚栄」の絵を焼いた炎を、メディチ家との友情で逃れました。
見どころ
ありえない首と肩
ヴィーナスの首は現実にはありえないほど長く、左肩は解剖学的に不可能な角度に傾いています。レオナルドやラファエロの厳格な写実とは違い、美しさを強調するためだけの変形です。後のマニエリスムに通じます。
恥じらいのヴィーナス
片手で胸を、もう片手で髪を引いて下半身を隠すポーズは、当時発掘された古代彫刻「恥じらいのヴィーナス」の型を借りています。
西風が岸へ吹き寄せる
左で抱き合って息を吹くのは西風ゼピュロス。右で花模様の外套を差し出すのは季節の女神ホーラ。ヴィーナスは貝殻に乗って、風に押されて岸に着いたところです。
焼かれずに残った理由
当時のフィレンツェの絵画の大部分はカトリック教会の宗教的主題で描かれていました。裸の異教の女神を主役にしたこの絵は、まぎれもなく異教的です。修道士サヴォナローラが「虚栄の焼却」で異教的な作品を焼き尽くした際、ボッティチェッリの多くの作品も失われましたが、この絵は残りました。ボッティチェッリがロレンツォ・デ・メディチと非常に親しく、メディチ家の権力に守られたためです。
記録に残る絵と、目の前の絵
ヴァザーリが言及した『ヴィーナスの誕生』は、ウフィツィにあるこの絵ではなく失われた別の絵ではないか、と推測する研究者もいます。制作年も「1483年頃かそれ以前」という幅で語られています。
よくある疑問
- 『ヴィーナスの誕生』はどこにある?
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フィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵し、常設展示しています。同じボッティチェッリの『春(プリマヴェーラ)』と同じ部屋です。
- 誰のために描かれた?
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『春』と同様、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチの別荘カステッロ邸を飾るために描かれたと考えられています。ジュリアーノ・デ・メディチの愛人シモネッタ・ヴェスプッチへの愛を祝う絵だという説もあります。彼女は伝承でヴィーナス誕生の地とされる海辺の町ポルトヴェーネレの出身でした。
- 何の場面?
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ギリシア神話で、女神ヴィーナス(アプロディーテー)が成熟した大人の姿で海から生まれ、岸に現れたところです。詩人ポリツィアーノの詩やオウィディウスの『変身物語』の描写とよく似ています。
- 同じ題名の別の絵がある?
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あります。ブグロー、カバネル、ルドンなどが同じ題名の絵を描いています。このサイトにもブグローの『ヴィーナスの誕生』があります。
基本データ
- 作者
- サンドロ・ボッティチェッリSandro Botticelli
- 制作年
- 1483年頃
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- テンペラ、カンヴァス
- 寸法
- 172.5 × 278.5 cm
- 様式
- Early Renaissance
- 所蔵
- ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
- 展示室
- ルネサンス
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出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル