鳥獣人物戯画

作者不詳(伝 鳥羽僧正覚猷)《鳥獣人物戯画》12〜13世紀(平安時代末〜鎌倉時代初期)
鳥獣人物戯画Chōjū-jinbutsu-giga
12〜13世紀(平安時代末〜鎌倉時代初期)
紙本墨画、絵巻(全4巻)、甲巻 縦30.4 cm、長さ約11 m
高山寺(京都)。東京国立博物館・京都国立博物館に寄託
何がすごいのか

ウサギとカエルが相撲を取り、サルが読経する。800年前の絵巻が「日本最古の漫画」と呼ばれるのは、動物を人のように動かしたからだけではありません。全4巻は筆致も年代も違い、作者は誰なのか、どういう順番だったのかも、2009年からの修理で覆りました

見どころ

線だけで描く

彩色はいっさいなく、墨の線だけで毛の柔らかさや水しぶきまで描き分けています。線の太さと速さの変化が、動物たちの動きそのものになっています。

口から出る線、目に浮かぶ文字

叫ぶカエルの口から放射状に出た線や、驚いた目の表現など、現在の漫画で使われる効果に似た手法が一部の場面に見られます。「日本最古の漫画」と呼ばれる根拠のひとつです。

動物が人の遊びをする

甲巻には水遊び、弓の的当て、相撲、法要、けんかが描かれ、登場するのはウサギ、カエル、サル、シカ、キツネ、イノシシなど11種。萩が咲いているので秋の景色とみられます。

4巻はもともと別の作品だった

各巻のあいだに明確なつながりはなく、筆致も画風も異なります。平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、複数の作者が別個の作品として描いたものが高山寺に伝わった結果、『鳥獣人物戯画』として一組になったとされています。

甲巻は成立当初、それ自体で2巻以上の独立した絵巻だったと考えられ、少なくとも1巻は草むらから蛇が現れて動物たちが逃げ出し、遊びが終わるという構成でした。断簡や模本からその姿が推定できます。

修理でわかった順序の入れ替わり

2009年から4年かけて行われた大規模な修理で、甲巻の中盤と後半の絵が入れ替わっていることがわかりました。室町時代の戦乱で高山寺の伽藍が焼けた記録があり、その際に一度持ち出され、後に回収してつなぎ直したときに順序が変わった可能性があります。

丙巻はさらに意外でした。前半の人物画と後半の動物画は別の絵巻を合わせたものと考えられていましたが、修復の過程で、もとは1枚の紙の表に人物、裏に動物を描いたものを薄く2枚に剥がしてつなぎ直したものだと判明しました。19枚目のカエルの絵の墨跡と2枚目の人物の烏帽子の位置が、背中合わせにするとぴたりと合ったのです。江戸時代に鑑賞しやすいよう分けられたと推定されています。

よくある疑問

『鳥獣戯画』は誰が描いた?

わかっていません。戯画の名手と伝えられる鳥羽僧正覚猷の作と長く言われてきましたが、それを示す資料はなく、4巻それぞれ筆致も年代も違うため、複数の絵師が別々に描いたものが高山寺に集まって一組になったと考えられています。

どこで見られる?

京都・高山寺の所蔵で、国宝です。ふだんは東京国立博物館と京都国立博物館に寄託されていて、常設では見られません。展覧会での公開時に全巻または一部が展示されます。一部を切り取った「断簡」が東京国立博物館などにあり、2017年に重要文化財に指定されています。

正式な名前は?

『鳥獣人物戯画』です。甲・乙・丙・丁の4巻からなり、有名なウサギとカエルは甲巻です。乙巻は馬や牛のほか虎・象・竜・麒麟まで描いた動物図鑑のような巻、丙・丁巻には人物の遊戯や法要も描かれています。

なぜ「日本最古の漫画」と言われる?

動物を擬人化して物語のように連ねていることと、口から出る線など今の漫画に似た効果が一部に見られるためです。ただし、コマ割りやセリフがあるわけではなく、絵巻として右から左へ読みます。

基本データ

制作年
12〜13世紀(平安時代末〜鎌倉時代初期)
種別
絵巻
技法・素材
紙本墨画、絵巻(全4巻)
寸法
甲巻 縦30.4 cm、長さ約11 m
所蔵
高山寺(京都)。東京国立博物館・京都国立博物館に寄託

出典・画像について

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