
『岩窟の聖母』にはほぼ同じ構図の作品が2点存在します。ここで紹介するのはレオナルドが最初に手がけたとされるルーヴル版で、依頼から完成まで実に25年以上かかりました。なぜ同じ絵を2度描いたのかはいまも議論が続いています。
見どころ
頂点に立つマリアの手
岩場を背景に、聖母マリア・幼児キリスト・幼い洗礼者ヨハネ・天使の四人が三角形を作るように配置されています。マリアは右手をヨハネの肩にまわし、左手をキリストの頭上に掲げています。
鑑賞者を見る天使
画面右の天使は、キリストの体を支えながら鑑賞者のほうを見つめています。ロンドンにある同じ構図の作品では、この天使の視線は伏せられ、ヨハネを指差すしぐさもありません。
祝福するキリスト
最前面に描かれた幼児キリストは、ひざまずくヨハネに向けて右手を掲げ祝福を与えています。ヨハネは両手を合わせ、キリストに祈りを捧げるように見つめています。
8か月の納期のはずが
1483年4月25日、ミラノの無原罪の御宿り信心会が、レオナルドとデ・プレディス兄弟に礼拝堂の祭壇画を発注しました。納品日はその年の12月8日と定められていましたが、代金をめぐる争いが長引きます。
最終的にこの絵が礼拝堂へ納められたのは1508年のことでした。契約から完成まで25年近くを要した計算になります。
パリへ渡った経緯
ルーヴル版の『岩窟の聖母』が最初に記録に残るのは1625年、フォンテーヌブロー宮殿で見られたというものです。1806年には板からカンヴァスへ移植する修復が行われ、その後ルーヴル美術館の所蔵となりました。
よくある疑問
- 『岩窟の聖母』はどこにある?
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このページで紹介するルーヴル版はパリのルーヴル美術館が所蔵しています。ほぼ同じ構図のもう1点はロンドンのナショナル・ギャラリーにあり、こちらは「ロンドン版」と呼ばれています。
- なぜ同じ絵が2点あるの?
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1483年の依頼でルーヴル版を描いたレオナルドが、何らかの理由でこれを別人に売却し、代わりにロンドン版を描き直して礼拝堂へ引き渡したという説が広く知られています。ただしどちらが先に描かれたかは研究者の間でも意見が分かれています。
- ルーヴル版とロンドン版はどう違う?
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もっとも大きな違いは画面右の天使です。ロンドン版の天使は膝に手を置き視線を伏せていますが、ルーヴル版の天使はヨハネを指差し鑑賞者のほうを見ています。背景の岩場の描き込みや色使いにも差があります。
- 誰が描いた?
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レオナルド・ダ・ヴィンチです。ルーヴル版は多くの研究者から真作と認められています。ロンドン版は長らく弟子の手が入っていると考えられていましたが、2009〜2010年の洗浄保存作業で大部分がレオナルド自身によるものと判明しました。
基本データ
- 作者
- レオナルド・ダ・ヴィンチLeonardo da Vinci
- 制作年
- 1483〜1486年頃
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、板(のちにカンヴァスへ移植)
- 寸法
- 199 × 122 cm
- 様式
- Early Renaissance
- 所蔵
- ルーヴル美術館(パリ)
- 展示室
- ルネサンス
レオナルド・ダ・ヴィンチのほかの作品
《受胎告知》 《最後の晩餐》 《白貂を抱く貴婦人》 《ウィトルウィウス的人体図》 《モナ・リザ》
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル