この作品のデータ
| 作者 | ヨハネス・フェルメール | 同じ作家の作品 12点 |
|---|---|---|
| 制作年 | 1670〜1675年 | |
| 時代 | バロック・ロココ | 同じ時代の作品 37点 |
| 様式 | オランダ黄金時代 | 同じ様式の作品 16点 |
| 種別 | 絵画 | |
| 技法・素材 | 油彩、カンヴァス | |
| 所蔵 | ライデン・コレクションニューヨーク | |
| 有名度 | ★★★ |
1945年に発覚した贋作事件をきっかけに、この絵はフェルメールの作ではないと疑われるようになりました。1993年からの科学調査で、カンヴァスが『レースを編む女』と同じ布から切られた可能性が高いことなどがわかり、いまは真作とする見方が大勢です。晩年のフェルメール作品で唯一、個人が所有している1枚でもあります。
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見どころ
1670年頃の髪型
髪を後ろで束ね、巻き毛を両側に垂らして赤いリボンを結んでいます。この髪型は1670年頃の2〜3年だけ流行したもので、『レースを編む女』の髪と共通します。目のまわりには、17世紀のオランダではごく一部の画家しか使わなかった緑土が塗られています。
あとから塗られたショール
肩を覆う黄色いショールは、ほかの部分が仕上がったあとで塗り重ねられました。元の層との間からは、空気中を漂っていたデルフト陶器の粒子とされる物質が見つかり、デルフトで長く放置された後の加筆とわかっています。誰が加筆したのかは長く議論されてきましたが、アムステルダム国立美術館の調査はフェルメール自身だと結論しました。
鍵盤に置いた両手
女性は鍵盤に両手を置いたまま、こちらへ顔を向けて微笑んでいます。ヴァージナルはオランダの室内画で愛や調和を表す楽器で、17世紀の作例では9割が女性と一緒に描かれました。ロンドンにある『ヴァージナルの前に立つ女』『ヴァージナルの前に座る女』の楽器と似ていますが、同じ楽器ではありません。
贋作事件に巻き込まれた絵
最初の記録は1696年、アムステルダムで開かれたディシウス・コレクションの競売カタログです。題は『クラヴシンベルを弾く若い女性』でした。1814年の競売を最後に記録は途切れ、1904年、ダイヤモンド事業家アルフレッド・バイトのコレクション目録に現れます。バイトの美術顧問だったヴィルヘルム・ボーデが、フェルメールの作品として発表しました。
その後しばらくは真作とされていましたが、1945年にハン・ファン・メーヘレンの贋作事件が発覚して風向きが変わります。1889年生まれのメーヘレンに、1904年の目録に載った絵は描けません。それでも見直しは進み、多くの研究者が模倣者の作や継ぎはぎの作と論じました。1960年にはベルギーの貴族フレデリック・ロランが、クレー、シニャック、ボナール、リオペルの4点と交換して手に入れています。
同じ布から切ったカンヴァス
1993年、ロランはサザビーズに鑑定を頼みました。顔料とカンヴァスの分析で、まず17世紀に描かれた絵だと確かめられ、後世の贋作という線は消えました。カンヴァスの密度は1平方センチに縦横12本ずつで、大きさの似た『レースを編む女』と同じです。X線で見た織り目も似ており、2枚は同じ布から切られた可能性が高いとされています。
画面には、消失点を決める糸を留めた針穴も残っていました。背景の壁や椅子には高価なウルトラマリンが使われています。壁や肌にこの顔料を使った画家は、当時のオランダではフェルメールのほかに確認されていません。
2001年の「フェルメールとデルフト派」展に参考出品されたあと鑑定委員会がつくられ、19世紀の修復が取り除かれました。修復後の絵を見て、否定的だった委員も真作だと考えを改めています。
競売と晩年の簡素な構成
2004年、ロランの遺族がサザビーズの競売に出し、ラスベガスのカジノ経営者スティーブ・ウィンが1624万5600ポンドで落札しました。フェルメールの作品が競売に出たのは、1921年の『恋文』以来です。2008年にトーマス・カプランが買い取り、自身のライデン・コレクションに加えました。
晩年のフェルメールは光の表現への関心が薄れ、描き方が様式化・簡略化していったとされます。この絵にも窓や壁の絵、ほかの家具はなく、作品のなかでも簡素な部類です。チェンバロとリュートと歌で音楽を合わせる3人を描いた『合奏』と並べると、人物と楽器だけに絞った構成がよくわかります。
読んだらクイズ
この拡大は、どの見どころ?

あとから塗られたショール肩を覆う黄色いショールは、ほかの部分が仕上がったあとで塗り重ねられました。元の層との間からは、空気中を漂っていたデルフト陶器の粒子とされる物質が見つかり、デルフトで長く放置された後の加筆とわかっています。誰が加筆したのかは長く議論されてき…
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よくある疑問
- 『ヴァージナルの前に座る若い女』はどこにある?
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ニューヨークの個人コレクション、ライデン・コレクションが所蔵しています。美術館の収蔵品ではありませんが、フェルメールの真作としてアメリカ、イギリス、日本、イタリア、フランス、オランダの展覧会に出品されてきました。日本では2008年に、東京都美術館のフェルメール展で展示されています。
- 『ヴァージナルの前に座る女』と何が違う?
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『ヴァージナルの前に座る女』はロンドン・ナショナル・ギャラリーにある別の作品で、英語では同じ題で呼ばれることもあります。ライデン・コレクションの解説では、ロンドンの絵は51.5 × 45.5 cmと縦横ともおよそ2倍あり、床のタイルやカーテン、壁の絵、手前のヴィオラ・ダ・ガンバまで描き込まれています。こちらは白い壁を背にした女性と楽器、椅子だけです。どちらが先に描かれたかはわかっていません。
- 本当にフェルメールが描いた?
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真作とする意見が大勢です。素材・技法・様式のいずれもフェルメールに近く、同時代にほかに描けそうな画家は知られていません。最後まで疑われた黄色のショールも、フェルメール自身の加筆と結論されました。署名と年記はありません。
ヨハネス・フェルメールのほかの作品
《牛乳を注ぐ女》 《デルフト眺望》 《真珠の首飾りの女》 《合奏》 《真珠の耳飾りの少女》 《絵画芸術》 《地理学者》 《天文学者》
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル




