犀

アルブレヒト・デューラー《犀》1515年
犀The Rhinoceros
1515年
木版画、紙、21.4 × 29.8 cm
大英博物館(ロンドン)、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントンD.C.)ほか

この作品のデータ

作者アルブレヒト・デューラー同じ作家の作品 4点
制作年1515年
時代ルネサンス同じ時代の作品 58点
様式北方ルネサンス同じ様式の作品 11点
種別版画同じ種別の作品 5点
技法・素材木版画、紙
所蔵大英博物館ロンドン
有名度★★★
展覧会ルーヴル美術館展 ルネサンス国立新美術館(東京都)2026年9月9日(水)〜12月13日(日)開催中
何がすごいのか

デューラーは本物のサイを一度も見ないままこの木版画を作りました。手元にあったのは、リスボンから届いた手紙と作者不明のスケッチだけです。背中の角も鎧のような皮膚も実際のサイにはありません。それでもこの姿は、18世紀末まで正しいサイの姿と信じられていました。

見どころ

背中のねじれた角

肩の上に、小さくねじれた2本目の角が生えています。実際のサイにこの角はありません。同じ年にハンス・ブルクマイアーが作ったサイの木版画には、この角は描かれていません。

喉当てのような首の板

首から肩にかけて、喉当てや胸当てのような硬い板が重なり、縁には鋲のような点が並びます。インドサイの厚い皮膚のしわを写した、鎧のデザインから着想した、など複数の説があります。

1513年と刻んだ説明書き

上の欄外には、大プリニウスの記述をもとにしたドイツ語の説明が刷られています。冒頭ではサイの到着を1513年5月1日としていますが、実際にリスボンに着いたのは1515年5月20日です。

教皇への贈り物になったサイ

モデルのインドサイは、インドのグジャラートの君主からポルトガル領インド総督への外交の贈り物でした。総督はこのサイを、飼育係とともにポルトガル王マヌエル1世へ送ります。サイは120日の航海を経て、1515年5月20日にリスボンへ着きました。マヌエル1世は大プリニウスの記述を確かめようと、若いゾウとサイを戦わせます。ところがゾウは観客の騒ぎにおびえ、一度も戦わずに逃げ出しました。

1515年12月、マヌエル1世はこのサイを教皇レオ10世に贈るため、ローマへ送り出しました。途中のマルセイユ沖では、フランソワ1世が見物するためにサイを島へ上陸させたという話が伝わります。その後、船はイタリア沖で嵐にあって難破しました。サイは甲板に鎖でつながれていたため泳げず、溺れ死んでいます。

木版画を選んだ理由

デューラーは、細かい表現ができる銅版画ではなく木版画を選びました。木版画のほうが安く大量に刷れたためと考えられています。これが当たり、ほぼ同時期に作られたブルクマイアーのより正確なサイは、刷りが1枚しか残っていません。

デューラーの『犀』は死後も版を重ね、全部で8つの版が刷られました。17世紀には版木に虫食いの穴が空き、脚にひびが入っていましたが、色の版木を足して多色刷りでも出版されています。同じ動物を描いたデューラーの作品には、水彩の『野兎』もあります。

江戸の日本まで届いた姿

この姿は多くの博物学書に写され、ゲスナーの『博物誌』にも載りました。ヤン・ヨンストンの『動物図譜』にも掲載され、この本は江戸時代の日本にも伝わります。谷文晁はそこから『犀図』を模写し、それより早い1782年には桂川甫周が拡大した彩色図を描いています。ヨーロッパで正確な絵に置き換わり始めたのは、生きたサイが巡業した18世紀半ば以降です。それでもドイツでは1930年代まで、学校の教科書に正確なサイの絵として載っていました。

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よくある疑問

『犀』はどこにある?

木版画なので、複数の刷りが各地に残っています。ワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートなどが所蔵し、ロンドンの大英博物館には、デューラーが版画の前に描いたペンとインクの素描と、17世紀に刷られた多色版があります。

デューラーは本物のサイを見た?

見ていません。リスボンからニュルンベルクに届いた筆者不明の手紙とスケッチをもとに、まずペンとインクで素描を描き、それを左右反転させて木版画にしました。当時のヨーロッパでは、ローマ時代以来、生きたサイは見られていませんでした。

なぜ鎧を着たような姿なの?

理由はわかっていません。インドサイの厚い皮膚のしわを表した、デューラーの誤解や想像が入った、という説があります。デューラーは当時ニュルンベルクの甲冑職人街の近くに住み、甲冑のデザインもしていました。

いくらの価値がある?

初版の刷りは数が少なく貴重です。2013年にクリスティーズ・ニューヨークで初版の刷りが86万6,500ドルで落札され、デューラー作品の競売最高額になりました。

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アルブレヒト・デューラーのほかの作品

《自画像》 《野兎》 《メランコリア I》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(CC0)。元ファイル

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