フランソワ1世の肖像

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《フランソワ1世の肖像》1538年
フランソワ1世の肖像Portrait of Francis I
1538年
油彩、カンヴァス、109 × 89 cm
ルーヴル美術館(パリ)

この作品のデータ

作者ティツィアーノ・ヴェチェッリオ同じ作家の作品 4点
制作年1538年
時代ルネサンス同じ時代の作品 58点
様式ヴェネツィア派同じ様式の作品 4点
種別絵画
技法・素材油彩、カンヴァス
所蔵ルーヴル美術館パリ同じ所蔵の作品 26点
有名度★★★
展覧会ルーヴル美術館展 ルネサンス国立新美術館(東京都)2026年9月9日(水)〜12月13日(日)開催中
何がすごいのか

ティツィアーノはこの肖像を描いたとき、フランソワ1世に会えていませんでした。手がかりにしたのは、ベンヴェヌート・チェッリーニが王の横顔を刻んだ1枚のメダルです。そのため王は、古代ローマ皇帝のような真横の顔で描かれています。それでも本作は、この王の最も有名なイメージの1つになりました。

見どころ

メダルから写した横顔

王の顔は真横を向いています。チェッリーニのメダルをもとにしたため、メダルと同じ側面像になりました。古風な形式ですが、ルーヴル美術館はこの顔に偉大さと率直さが満ちていると評しています。

羽根飾りの黒い帽子

白い羽根で縁取った黒い帽子をかぶっています。英国のヘアウッド・ハウスにある別バージョンは同じ横顔ですが、王は帽子をかぶっていません。

ふくらんだ袖と赤い胴衣

黒い上着の下から、赤い胴衣と淡い色の袖がのぞいています。光を受けた袖のふくらみが、暗い画面の中で目を引きます。研究者ケネディーは、この王の姿を享楽家としての活力に溢れていると書いています。

王に会わずに描いた肖像

モデルのフランソワ1世は、1515年に即位したフランス国王です。マリニャーノの戦いに勝ち、教皇レオ10世と政教協約を結びました。1516年にはレオナルド・ダ・ヴィンチをフランスに招き、アンボワーズのクロ・リュセ城を与えています。ヴァザーリは、レオナルドが王に看取られて亡くなったと伝えています。

一方でヴァザーリは、ティツィアーノが1516年に王の実物を見て肖像を描いたとも書いています。王がボローニャで教皇と会談するため、イタリアに滞在していた時期です。これが正しければ本作は2作目になります。ただしその場合でも20年以上会っていないので、新しい王の姿を知る手がかりは必要でした。同じ1538年に、ティツィアーノは『ウルビーノのヴィーナス』も描いています。

別人の作とされた時期

肖像は献上後、何らかの理由でフランス王室のコレクションを離れました。次に持ち主になったのは、美術収集家として知られた枢機卿ジュール・マザランです。マザランの目録では、本作はドッソ・ドッシの作品として記載されていました。1665年、枢機卿の死後にルイ14世が買い取り、本作は王室コレクションに戻りました。

ティツィアーノは1548年にもウルビーノ公のために3つ目のバージョンを描いたことがわかっています。ヘアウッド・ハウスの帽子をかぶらない版は、ルーヴル版の下絵か、完成作の控えとして使われた可能性があります。

アングルが借りた王の顔

本作の王の姿は、後の時代に何度も写されました。バロック期のジル=エドム・プティやジャン・マサールをはじめ、フランス内外の多くの画家や版画家が版画にしています。新古典主義の画家アングルは、この王の図像を『レオナルド・ダ・ヴィンチの死』に引用しました。レオナルドの最期を描いた歴史画で、その場にいる王の姿に本作の図像が使われています。

読んだらクイズ

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よくある疑問

『フランソワ1世の肖像』はどこにある?

パリのルーヴル美術館が所蔵しています。同じ構図の作品は英国リーズ近郊のヘアウッド・ハウス、オスロのセムチェシェン・コレクションにもあり、胸像だけのバージョンはミュンヘンのアルテ・ピナコテークにあります。

モデルは誰?

1515年に即位したフランス国王フランソワ1世(1494〜1547年)です。芸術の保護者として知られ、1516年にはレオナルド・ダ・ヴィンチをフランスに招きました。

なぜ横顔で描かれている?

ティツィアーノが王に直接会えず、チェッリーニが作った横顔のメダルを手本にしたからです。メダルの側面像をそのまま写したため、古代ローマ皇帝の肖像のような形になりました。

誰の依頼で描かれた?

詩人ピエトロ・アレティーノの依頼と考えられています。完成した1538年に、アレティーノがフランソワ1世に献上しました。

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ティツィアーノ・ヴェチェッリオのほかの作品

《聖母被昇天 (ティツィアーノ)》 《ウルビーノのヴィーナス》

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