
作家マーク・トウェインは1880年の紀行文でこの絵を「世界で最もわいせつな絵画」と酷評しました。ジョルジョーネの『眠れるヴィーナス』の構図を借りながら、ティツィアーノは官能性をさらに強調しています。貞節の象徴とされる犬は、番犬ではなくただ眠っています。
見どころ
挑発的な視線
ヴィーナスは正面のこちら側を見つめています。裸体に無関心な鑑賞者にさえ挑発的な視線を投げかけていると評されてきました。花束を持つ右手は愛を象徴しています。
陰部を隠す左手
画面中央、左手は陰部を隠していますが、隠すというより挑発するように置かれています。すぐそばで眠る犬は本来貞節の象徴ですが、番犬としての役割を放棄しています。
衣装箱を探るメイド
背景右側では、メイドがチェスト(衣装箱)からヴィーナスの衣服を探しているように見えます。この絵はもともと婚礼調度品チェストの装飾だった可能性が指摘されています。
婚礼調度品としての依頼
この絵はウルビーノ公爵グイドバルド2世・デッラ・ローヴェレの依頼で描かれました。もともとイタリアで結婚の贈り物として用いられる家具、チェスト(cassone)の装飾だったのかもしれません。背景のメイドは、ヴィーナスの衣服を探してチェストを探っているようにも見えます。
これほどまでに官能的に描かれているのは、公爵の年若い花嫁ジュリア・ヴァラノへの「教育」を意図したものではという推測もあります。1997年には美術史家ローナ・ゴフィンが、この絵画の意味を考察した論文を発表しました。
「世界で最もわいせつ」という酷評
毒舌で知られる文豪マーク・トウェインは、1880年の旅行記『ヨーロッパ放浪記』でこの絵を酷評しました。「全世界に存在する絵画の中で、最も下品で下劣でわいせつな絵画である」と書き、さらに皮肉を込めて「他のどこに飾るのもばかげた作品だから、美術館に飾られているに違いない」と続けています。
マネと文学への影響
エドゥアール・マネは1863年の『オランピア』(オルセー美術館蔵)でこの構図を借り、ヴィーナスを売春婦に置き換えて描きました。文学の分野でも、サラ・デュナントの小説『In the Company of the Courtesan』に登場する売春婦の原型になったとされています。
よくある疑問
- 『ウルビーノのヴィーナス』はどこにある?
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フィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵しています。ティツィアーノがヴェネツィア派の巨匠として活躍していた1538年ごろに描かれました。
- 誰が描いた?
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ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノが1538年ごろに描きました。構図はジョルジョーネの『眠れるヴィーナス』を踏襲していますが、ティツィアーノはさらに官能性を追求したとされています。
- モデルは誰?
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特定の実在のモデルは伝わっていません。ローマ神話の女神ヴィーナスを描いたものとされ、依頼主ウルビーノ公爵グイドバルド2世の花嫁ジュリア・ヴァラノへの「教育」を意図したのではという推測もありますが、確定した説ではありません。
- マネの『オランピア』と何が違う?
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『ウルビーノのヴィーナス』の構図は、1863年にエドゥアール・マネが描いた『オランピア』に影響を与えました。マネはヴィーナスを娼婦に置き換え、寓意の女神像を現実の女性へと転換しています。
基本データ
- 作者
- ティツィアーノ・ヴェチェッリオTitian
- 制作年
- 1538年頃
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩
- 寸法
- 119 × 165 cm
- 様式
- ヴェネツィア派
- 所蔵
- ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
- 展示室
- ルネサンス
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出典・画像について
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