大使たち

ハンス・ホルバイン《大使たち》1533年
ハンス・ホルバインHans Holbein the Younger
大使たちThe Ambassadors
1533年
油彩、板、207 × 209.5 cm
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
何がすごいのか

床に描かれた正体不明の物体は、右か左から鋭角に覗き込むと頭蓋骨に変わります(アナモルフォーシス)。棚に並ぶ道具は天文・地理・数学・音楽の教養(クワドリウィウム)を誇示するためのものです。この絵はヘンリー8世のローマ・カトリック離脱を思いとどまらせる外交の最中に描かれました。

見どころ

床の歪んだ頭蓋骨

画面下部に描かれた細長い物体は、正面から見ても何なのかわかりません。アナモルフォーシスという技法が使われており、右か左から鋭角に見ると頭蓋骨だとわかります。死はいつ訪れるかわからないという深刻なテーマが込められています。

棚に並ぶ学問の道具

2人の間の棚には天球儀、日時計、地球儀、楽譜など様々な道具が並んでいます。数学・音楽・地理学・天文学というクワドリウィウムを構成する4学科に関係し、2人の高い教養を表しています。

隠されたキリスト磔刑像

画面左上、カーテンの陰にキリストの磔刑像が半ば隠れて描かれています。豪華な衣装と知への自負に満ちた2人の背後に、静かに信仰と死を思い出させる存在として置かれています。

短剣と書物に刻まれた年齢

左に立つダントヴィルは29歳、右のセルヴは25歳とされています。年齢は本人が語ったものではなく、ダントヴィルが手にする短剣の柄と、セルヴが右ひじを置く書物の側面に刻まれた書き込みから読み取られています。ダントヴィルにとってこれが3度目のイギリス訪問だった一方、セルヴにとっては最初の訪問でした。

ウェストミンスターを模した床

2人が立つ床のモザイク模様は、ウェストミンスター寺院内陣の床を模写したものとされています。棚の道具類が示す学問的な誇りと、荘厳な宮廷の床、そして足元に隠された頭蓋骨が、同じ画面の中に並べて描かれています。

深刻さを笑いに変える仕掛け

山形大学教授の元木幸一は、この絵について「深刻なテーマを、形の遊戯性で緩和している」とし、見る者に苦笑いを誘発する絵画だと評しています。死を突きつけながらも、謎解きのような仕掛けとして提示する点がこの作品の特徴です。

よくある疑問

『大使たち』はどこにある?

ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されています。イングランド王ヘンリー8世の命により、1533年にハンス・ホルバインが描きました。

誰が描かれている?

左はポリジー領主でフランス外交官のジャン・ド・ダントヴィル、右はラヴォールの司教ジョルジュ・ド・セルヴです。2人ともヘンリー8世のローマ・カトリックからの離脱を思いとどまらせるためにフランスから派遣された「大使たち」です。

なぜ床に変な物体があるの?

アナモルフォーシスという技法で描かれた頭蓋骨です。正面からは何なのかわからず、右か左から鋭角に見て初めて頭蓋骨だとわかる仕掛けになっています。死はいつ訪れるかわからないという主題を表しているとされています。

棚の道具にはどんな意味がある?

天球儀・日時計・地球儀・楽譜などはいずれも数学・音楽・地理学・天文学に関係し、当時の学問「クワドリウィウム」を構成していました。2人の高度な教養を示すために描かれたと考えられています。

基本データ

作者
ハンス・ホルバインHans Holbein the Younger
制作年
1533年
種別
絵画
技法・素材
油彩、板
寸法
207 × 209.5 cm
様式
マニエリスム
所蔵
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

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