
この作品のデータ
| 作者 | アレクサンドル・カバネル | |
|---|---|---|
| 制作年 | 1863年 | |
| 時代 | 近代 | 同じ時代の作品 43点 |
| 様式 | アカデミック美術 | 同じ様式の作品 3点 |
| 種別 | 絵画 | |
| 技法・素材 | 油彩、カンヴァス | |
| 所蔵 | オルセー美術館パリ | 同じ所蔵の作品 29点 |
| 有名度 | ★★★ |
眠っているように見えるこの女神は、よく見ると腕の陰から鑑賞者を見ています。1863年のサロンでは芸術の王道と称賛され、皇帝ナポレオン3世が自分のコレクションに買い上げました。一方で作家ゾラは、この女神の体を白とピンクの練り菓子にたとえています。
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見どころ
腕の陰からのぞく目
ヴィーナスは片腕を頭の上に回し、ひじの陰から鑑賞者のほうへ憂鬱そうな視線を向けています。目は閉じているようにも見えますが、美術史家ロバート・ローゼンブラムは、よく見ると目覚めているとわかると指摘しました。眠っているとも起きているともつかない裸婦は男性の鑑賞者にとって手ごわい、とも書いています。
ほら貝を吹くクピードー
女神の頭上では、白や青の小さな翼をもつクピードーたちが飛び回っています。ほら貝を吹き鳴らしながら、ヴィーナスの誕生を祝っているところです。
波に広がる長い髪
ヴィーナスは、生まれたばかりの姿で白く泡立つ波の上に横たわっています。褐色の髪はひざのあたりまで届く長さで、波の上に流れるように広がっています。
皇帝が買ったサロンの勝者
1863年のサロン・ド・パリには、女性の裸体画が数多く並びました。そのなかで本作は芸術の王道と称賛され、ナポレオン3世が個人コレクションのために買い上げました。カバネルはこれで名声を確かなものにし、同じ年に国立美術学校エコール・デ・ボザールの教授になっています。
カバネルはエコール・デ・ボザールで画家ピコに学び、1843年にサロンへ初めて出品しました。1845年にはローマ賞で2位を取っています。神話を題材にした絵で知られ、肖像画家としてもヨーロッパ内外で名を上げました。所蔵館の解説によると、本作はアングルへの参照と18世紀風の描き方を組み合わせた作品で、第二帝政期の公式な好みをよく表しています。
2年後に現れた『オランピア』
1865年のサロンには、マネが『オランピア』を出品しました。この2点はよく比べられます。美術史家ジェームズ・ルービンは、神話の装いをまとったカバネルの絵のほうがはるかに性的な魅力に訴えると書きました。マネは裸婦から神話を取り去り、現代の現実を見せた、というのがルービンの見方です。
当時のサロンは、優美な形と古典に由来する題材を重んじる保守的な場でした。その価値観は、現代の生活を描く画家たちから揺さぶられはじめていました。本作は、その保守的なサロンの好みを代表する一枚とされています。
海の泡から生まれた女神
題材は、ギリシア神話のヴィーナスの誕生です。白く濁った海の泡から、美と愛の女神が生まれたばかりの場面が描かれています。同じ主題では、1483年頃に描かれたボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』がよく知られています。本作の水平線のはるか向こうに小さく見えるのは、キプロス島です。
本作が登場した数年後には、裸体画を描くことが大いに流行しました。アルマ=タデマやレイトン、ドレイパー、ワッツといった後の画家たちも、本作から大きな影響を受けています。
読んだらクイズ
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ほら貝を吹くクピードー女神の頭上では、白や青の小さな翼をもつクピードーたちが飛び回っています。ほら貝を吹き鳴らしながら、ヴィーナスの誕生を祝っているところです。
次に見る1枚
よくある疑問
- 『ヴィーナスの誕生』(カバネル)はどこにある?
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パリのオルセー美術館が所蔵しています。1863年のサロンに出品され、ナポレオン3世が個人コレクションとして買い上げた作品です。
- ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』と何が違う?
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どちらもギリシア神話の女神ヴィーナスの誕生を描いていますが、ボッティチェッリの作品は1483年頃、カバネルの作品は1863年の制作です。ボッティチェッリのヴィーナスは貝殻の上に立っていますが、カバネルのヴィーナスは波の上に横たわっています。
- なぜゾラに批判された?
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作家エミール・ゾラは、この女神を官能的な「ロレット」(娼婦の別称)のようだと書きました。さらに、肉と骨ではなく「白とピンクの練り菓子」でできているとも評しています。神話の女神という建前で、誘うようなポーズの裸婦を描いたあいまいさを突いた批評です。
- カバネルの『ヴィーナスの誕生』は何枚ある?
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3点が知られています。1863年のオルセー美術館の作品のほかに、1864年頃に描かれた小さな版(85 × 135.9 cm)がダヘシュ美術館にあります。1875年の版(106 × 182.6 cm)は、ニューヨークのメトロポリタン美術館の所蔵です。
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル



