アムールとプシュケー、子供たち

ウィリアム・アドルフ・ブグロー《アムールとプシュケー、子供たち》1890年
アムールとプシュケー、子供たちAmor and Psyche, children
1890年
油彩、カンヴァス
個人蔵

この作品のデータ

作者ウィリアム・アドルフ・ブグロー同じ作家の作品 2点
制作年1890年
時代印象派以後同じ時代の作品 105点
様式アカデミック美術同じ様式の作品 3点
種別絵画
技法・素材油彩、カンヴァス
所蔵個人蔵
有名度★★★
何がすごいのか

インターネットでは「ファーストキス」という題で紹介されたことがありますが、これは初期のバーチャル美術館が1873年の作として載せた誤りです。画面右下には1890年の年号と署名があります。神話の恋人クピードーとプシュケーを、ブグローは幼い子供の姿で描きました。

見どころ

頬への軽いくちづけ

クピードーがプシュケーの頬に軽くくちづける一瞬です。プシュケーは目を伏せて相手を見ず、胸元の手はクピードーを押し返すようにも見えます。

蝶の翅をもつプシュケー

クピードーの背には白い翼、プシュケーの背には蝶の翅が描かれています。プシュケーという語は、アリストテレスが蝶に付けた呼び名でした。人間から不死の存在になった彼女は、魂の変容の象徴とされます。

雲にかけた脚と青い布

クピードーは右脚を伸ばし、左脚を雲にかけて体を支えています。この脚が画面全体の釣り合いもとっています。二人の背後からは、青い布が雲の上へ流れ落ちています。

1890年のサロンへ

この絵は1890年のサロン・ド・パリに出品されました。この年、ブグローはフランス芸術家協会の会長を務めていました。ブグローは19世紀後半に活動した画家で、新古典主義の時代から少し遅れて、古典的な様式で描き続けました。

クピードーとプシュケーの物語は、18世紀半ばに古代ギリシア・ローマの神話への関心が高まってから、盛んに絵にされるようになりました。神と人間という身分の違いを越える恋は、この絵が描かれたころも人気の高い主題でした。二人を幼い子供として描いたこの絵も、サロンで広く受け入れられました。

子供の姿と青い画面

クピードーは、翼をもち弓矢を持つ、いたずら好きの幼児として描かれることの多い神です。一方のプシュケーは若い女性として描くのが美術史上の通例で、幼い姿のプシュケーはその原則から外れています。子供の姿は、ウェヌスに引き裂かれる前の二人の無垢を表しているとされます。

色づかいも主題に合わせて選ばれています。画面の大半は青で、これは恋物語の絵としては珍しい色です。ピンクや赤をあまり使わないことで、禁断の恋という面を遠ざけ、幼い恋を前に出しています。白く輝くバラ色の肌は純潔の象徴とされ、淡い色調とごく柔らかな筆づかいで描かれています。ふくよかな体つき、細い金髪、なめらかな肌といった質感の描き分けにも、ブグローは手間をかけています。

何度も描いた二人の物語

ブグローはクピードーとプシュケーの物語を、ほかにも何度か描いています。1889年のサロンに出した『プシュケーとアムール(Psyché et l’Amour)』は、1900年のパリ万国博覧会にも出品されました。1892年には『プシュケー(Psyché)』を、1895年のサロンには『プシュケーの誘拐(Le ravissement de Psyché)』を出しています。

一方で、ブグローは若い恋人としての二人を描いた作品も残しています。この絵の二人が子供の姿なのは、ブグローが意図して選んだ表現でした。同じ画家の神話画には『ヴィーナスの誕生』もあります。

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よくある疑問

『アムールとプシュケー、子供たち』はどこにある?

個人蔵で、美術館の所蔵品ではありません。完成した1890年に、パリのサロン(サロン・ド・パリ)に出品された記録があります。

何が描かれている?

ローマ神話の神クピードーと、人間の王女プシュケーが、幼い子供の姿で抱き合ってくちづけを交わす場面です。題の「アムール」はフランス語でクピードーを指し、ギリシア神話のエロースにあたります。二人は地上を離れ、空の雲の上にいます。

どんな神話?

2世紀にアプレイウスが書いた『変容(黄金のロバ)』に語られる物語です。プシュケーの美しさに怒った女神ウェヌスは息子クピードーを差し向けますが、クピードーは自分の矢で傷つき、彼女に恋をします。顔を見ないという約束が破られると彼は去り、プシュケーは地上と地下世界を探し歩きます。二人は最後に再会し、プシュケーは不死の身を与えられます。

『ファーストキス』と同じ絵?

同じ絵です。初期のバーチャル美術館のひとつ WebMuseum が、この絵を誤って1873年の『The First Kiss』として紹介していました。正しくは1890年の『アムールとプシュケー、子供たち』で、画面右下の署名にも1890年と記されています。

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《ヴィーナスの誕生》

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