アブサントを飲む人

エドガー・ドガ《アブサントを飲む人》1875〜1876年
アブサントを飲む人L’Absinthe
1875〜1876年
油彩、カンヴァス、92 × 68 cm
オルセー美術館(パリ)
何がすごいのか

この絵はもともと『カフェにて』という題でした。いまの『アブサンを飲む人』という名になったのは1893年のロンドン展で、改題後は英国の批評家たちから「道徳への打撃」と酷評されました。モデルは女優エレン・アンドレと、画家仲間のマルスラン・デブータンです。

見どころ

うつろな表情の女性

女優エレン・アンドレがモデルです。流行の装いに帽子をかぶり、虚ろな表情で下を見つめています。目の前のテーブルにはアブサンの入ったグラスが置かれています。

画面の外を見る男性

隣に座る男性は画家仲間のマルスラン・デブータンです。帽子をかぶり、画面右端の外へ視線を向けています。二人に会話はなく、けだるく孤独な空気が漂います。

テーブルのアブサングラス

女性の前に置かれたグラスには、当時のパリで流行したアブサンが注がれています。この一杯が、のちに絵の題名そのものになりました。

酷評から始まった評価

1876年に初めて公開されたとき、批評家たちはこの絵を醜く不快だと酷評しました。1877年の第3回印象派展でも展示されましたが、その後は1892年の競売に出るまで人目に触れませんでした。

1893年、ロンドンのグラフトン・ギャラリーで『アブサンを飲む人』と改題されて展示されると、いっそう激しい論争を呼びました。批評家ジョージ・ムーアは描かれた女性を評して「なんて娼婦なんだ」と述べ、「不愉快な話だが、教訓でもある」と続けました。のちに自著『モダン・ペインティング』では、この絵は単なる芸術作品であり、飲酒や社会問題とは関係ないと発言を悔いています。

海を渡った所有権

この絵はまず、ロンドンの画商チャールズ・デシャンから1876年にブライトンの収集家ヘンリー・ヒル大尉が購入しました。ヒルの死後、1892年2月のロンドンの競売でスコットランド人画商アレクサンダー・リードが顧客アーサー・ケイのために落札しています。ケイはこの絵に煮え切らない態度で、1893年4月にパリの画商へ売却しました。

よくある疑問

『アブサンを飲む人』はどこにある?

パリのオルセー美術館が常設所蔵しています。

モデルは誰?

女性は女優エレン・アンドレ、隣の男性は画家・版画家のマルスラン・デブータンです。二人が座っているのはパリのカフェ・ド・ラ・ヌーヴェル・アテーヌです。

発表当時の評判は?

1876年の初公開時から酷評され、醜く不快だとされました。1893年にロンドンで改題して展示されると、英国の批評家から道徳への警告として扱われ、いっそう強い論争を呼びました。

なぜ題名が変わった?

最初の題は『カフェにて』でした。当初は『フランスのカフェのスケッチ』『カフェの人物たち』とも呼ばれ、1893年のロンドン展を機に『アブサンを飲む人』という現在の題に変わりました。

基本データ

作者
エドガー・ドガEdgar Degas
制作年
1875〜1876年
種別
絵画
技法・素材
油彩、カンヴァス
寸法
92 × 68 cm
様式
印象派
所蔵
オルセー美術館(パリ)

エドガー・ドガのほかの作品

《舞台のバレエ稽古》 《エトワール》 《出走前》 《14才の少女ダンサー》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

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