叫び

エドヴァルド・ムンク《叫び》1893年
叫びThe Scream
1893年
テンペラ、クレヨン、厚紙、91 × 73.5 cm
オスロ国立美術館(オスロ)
何がすごいのか

叫んでいるのは、描かれた人物ではありません。ムンクは『自然を貫く果てしない叫び』を聞き、恐怖に耳をふさぐ人の姿を描いたと日記に記しています。同じ構図の『叫び』は全5点存在し、うち1点は1億1990万ドルで落札されました。

見どころ

耳をふさぐ人物

中央の人物は口を開けているように見えますが、叫んでいるのは人物自身ではありません。ムンクは日記で、自分が聞いた『自然を貫く果てしない叫び』に恐怖して耳をふさいでいる姿だと説明しています。

血のように赤い空

画面上部には血のように赤く染まったフィヨルドの夕景が広がります。この赤い夕焼けは、10年前のクラカタウ大噴火の影響を描いたという説がある一方、幻想的な真珠母雲に着想したとする研究もあります。

遠ざかる2人の友人

遠くの橋の上には、ムンクと一緒に歩いていた2人の友人の姿が小さく描かれています。ムンクだけがその場に立ち尽くし、不安に震えながら叫びを聞いたと日記に記しています。

『生命のフリーズ』の一枚

ムンクは幼くして母を、思春期には姉を亡くし、1890年代は病気や死と向き合わざるを得ない日々を過ごしました。この時期、『愛』と『死』、そこから生まれる『不安』をテーマにした作品群を『フリーズ・オブ・ライフ(生命のフリーズ)』と名付けています。『叫び』はその中でもっとも有名な一枚です。

構図や色使いは1892年の作品『絶望』がもとになっており、ムンク自身も『叫び』のシリーズの一つと位置づけています。発表当初は当時の評論家たちに酷評されましたが、のちに高く評価されるようになりました。実在する舞台として知られるのは、オスロとオスロ・フィヨルドを見下ろすエーケベルグの高台です。

2度の盗難と修復

1994年2月12日、リレハンメルオリンピック開会式の当日に、オスロ国立美術館所蔵の油彩画が盗まれました。ロンドン警視庁美術特捜班によるおとり捜査で、同年5月に犯人が逮捕され、絵は発見されています。

2004年8月22日には、ムンク美術館所蔵のテンペラ画が油彩画『マドンナ』とともに盗まれ、2006年8月31日にオスロ市内で発見されました。ただしテンペラ画は液体による損傷を受けており、完全な修復は不可能でした。2008年5月23日から、修復された『マドンナ』とともに展示が再開されています。

『狂人』の書き込み

オスロ国立美術館が所蔵する版には、左上隅に『狂人のみが描くことができる』という、肉眼では確認できないほど小さな鉛筆書きがあります。この書き込みが気づかれたのは、制作から11年後の1904年、コペンハーゲンで展示された際でした。

長らく評論家か来場者によるものと思われていましたが、2021年2月の赤外線調査と筆跡鑑定により、ムンク自身の書き込みだと結論づけられました。1895年にノルウェーで初めて展示された際、激しい批判とともにムンクの精神状態を疑う声が上がっており、それに反応して書いたのではないかという説があります。

よくある疑問

『叫び』はどこにある?

もっとも有名な1893年制作のテンペラ・クレヨン版は、オスロ国立美術館が所蔵しています。ムンクは同じ構図の『叫び』を5点以上制作しており、ほかの版はオスロのムンク美術館や個人が所蔵しています。

なぜ『叫び』というタイトルなの?

叫んでいるのは絵の中の人物ではなく、ムンクが自然の中で聞いたとされる『果てしない叫び』です。ムンクは日記に、友人と歩道を歩いていて空が血の赤色に変わり、疲れと不安から立ち止まって耳をふさいだ体験を記しています。

モデルはいるの?

特定のモデルはいません。1978年、米国の美術史家ロバート・ローゼンブラムはパリの人類史博物館に展示されていたペルーのミイラが人物のモデルだという説を唱えました。丸く落ちくぼんだ目や開いた口など共通点が多いとされますが、確定した説ではありません。

いくらの価値がある?

2012年5月、実業家ペッター・オルセンが所有していた1895年制作のパステル版が、米国ニューヨークのサザビーズで1億1990万ドル(日本円で約96億円)で落札されました。これは当時、絵画の競売落札価格として史上最高値でした。

基本データ

制作年
1893年
種別
絵画
技法・素材
テンペラ、クレヨン、厚紙
寸法
91 × 73.5 cm
様式
表現主義
所蔵
オスロ国立美術館(オスロ)

エドヴァルド・ムンクのほかの作品

《マドンナ》 《思春期》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!