
ラファエロの聖母子とは違い、ムンクの『マドンナ』は聖母マリアを十代にも見えるほど若く官能的な女性として描いています。20世紀に至るまで、聖母は品のよい熟年女性として描かれるのが常でした。2004年には覆面の男たちに銃を突きつけられ、『叫び』とともに美術館から奪われました。
見どころ
閉じられたまぶた
彼女は目を閉じて慎ましさを示しながら、同時に上方からの光に照らされています。従来の受胎告知の聖母表現に見られる要素です。
反らした背と伸ばした腕
後ろに手を伸ばして背をそらすポーズは、鑑賞者の意識を彼女自身の肉体に惹きつけます。伝統的な聖母マリア像とは大きく異なる表現です。
光を受けるためによじる体
より多くの光を受けられるよう体をよじりながらも、自分の体を見つめることはありません。静謐さと穏やかな自信を保っています。
官能的な聖母という逆説
本作の題名は聖母マリアを描いたことを示していますが、その表現は伝統から大きく外れています。20世紀に至るまで聖母の肖像は品のよい熟年女性を描いた高踏的な芸術であるのが常でしたが、ムンクが描いた人物は十代にも見えるほど若く、身をよじらせて表情豊かなポーズをとっています。それでも静謐さと穏やかな自信、上方からの光といった要素は、聖母表現の規範を部分的に受け継いでいます。
2004年の盗難と回復
2004年8月22日、銃を携えて覆面をした男たちがムンク美術館の警備員に床に伏せるよう脅し、壁の防護用の綱を引きちぎって『マドンナ』と『叫び』を奪い、黒い車で逃走しました。使用されたアウディ・A6ステーションワゴンは、後に乗り捨てられているのが発見されています。盗まれた2点は2006年8月31日にオスロ警察によって回収されました。『マドンナ』は完全に修復され、2008年5月23日から再び展示されています。
よくある疑問
- 『マドンナ』はどこにある?
-
ノルウェー・オスロのムンク美術館が所蔵する版は91×70.5cmの油彩画です。ムンクは1894年から1895年にかけて5つのヴァージョンの『マドンナ』を制作しており、別の1点は個人が所蔵しています。
- ラファエロの聖母子と何が違う?
-
ラファエロなど伝統的な聖母マリア像は品のよい熟年女性として描かれます。ムンクの『マドンナ』は十代にも見えるほど若く官能的な女性として描かれており、当時としては非常に変わった聖母表現でした。
- 盗まれたことがある?
-
あります。2004年8月22日、銃を持ち覆面をした男たちがムンク美術館から『マドンナ』と『叫び』を奪いました。2006年8月31日にオスロ警察が2点とも回収しています。
- 盗難でダメージを受けた?
-
『マドンナ』には直径2.5cmの穴が開きましたが、修復可能な状態でした。『叫び』は液体による損傷を受け完全な修復はできませんでしたが、『マドンナ』は完全に修復され、2008年5月23日から展示が再開されています。
基本データ
- 作者
- エドヴァルド・ムンクEdvard Munch
- 制作年
- 1894年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩
- 寸法
- 91 × 70.5 cm
- 所蔵
- ムンク美術館(オスロ)
- 展示室
- 印象派以後
エドヴァルド・ムンクのほかの作品
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル