
母子を描くことで知られたカサットが、珍しく男性を画面に登場させた作品です。オールを漕ぐ男が母子の世界を隔てる境界として使われているとも解釈されています。縦4フィート近い大作で、シカゴ万博の壁画を除けばカサット最大級の油彩画です。
見どころ
母の膝の子どもと父の背中
女性の膝には赤ん坊が抱かれ、男性は2人に向き合う形で背を向けて座っています。3人の手はすべて画面中央付近に集まるように配置され、母子と男の心理的な距離を示しているとされます。
地元漁師風の装い
背を向けた男性は、腰に巻いた飾り帯とふわりとしたベレー帽で、洗練された漁師風の装いをしています。この男が誰なのかは明らかにされていません。
対角線が集まる構図
オール、帆、男性の腕が作る対角線が、母子の位置する一点に向かって集まるように組まれています。日本の浮世絵版画の非対称な構図の影響が指摘されています。
充実期に手がけた異色作
カサットがこの絵に取りかかった1893年は、順調な1年でした。シカゴ万博の婦人館のための壁画『近代の女性』を完成させ、デュラン=リュエル画廊での個展も好評を博し、フランス政府がリュクサンブール美術館のために彼女の作品を1点購入することも決まっていました。
母と子という得意の主題を扱いながら、屋内や庭ではなく屋外の舟上を舞台にし、珍しく男性を登場させている点で、この絵はカサットの画業のなかでも異色の作品とされています。
手放すことをためらった1枚
カサットはこの絵を高く評価しながらも、長らく売却をためらいました。1914年、彼女は「この絵は家族に約束済みで、20年前、姪が生まれた年にアンティーブで描いたもの」と手紙に記しています。晩年になってようやく売りに出しましたが、それは家族が自分と同じほどこの絵を大切に思っていないと感じたためだったとされます。1966年には、この絵柄がアメリカの記念切手の図案にも採用されました。
よくある疑問
- 『舟遊び』はどこにある?
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ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートの所蔵です。1963年からチェスター・デイル・コレクションの一部として収蔵されています。
- 誰が描いた?
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メアリー・カサットです。アメリカ出身で、フランスに拠点を置いて活動した印象派の画家です。
- どこで描かれた?
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南フランスのアンティーブにある別荘「ラ・シガロンヌ」で、1893年から94年の冬に、母親とともに滞在していた際に制作されました。
- 何に影響を受けた絵?
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印象派の明るい色彩と屋外観察、日本の浮世絵版画の非対称な構図、そしてコレッジョの聖母子像の柔らかな様式が指摘されています。画家エドゥアール・マネの『舟遊び』(1874年)から着想を得た可能性も指摘されています。
基本データ
- 作者
- メアリー・カサットMary Cassatt
- 制作年
- 1893〜1894年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 90 × 117.3 cm
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントンD.C.)
- 展示室
- 印象派以後
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル