イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢

ピエール=オーギュスト・ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》1880年
イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢Mlle Irene Cahen d’Anvers
1880年
油彩、カンヴァス、65 × 54 cm
チューリッヒ美術館(チューリッヒ)
何がすごいのか

依頼主一家はこの絵を気に入らず、長らく使用人部屋に飾られるという冷遇を受けました。第二次世界大戦中はナチス・ドイツに没収され、ヘルマン・ゲーリングのコレクションとしてベルリンで保管されていたこともあります。モデルは当時8歳の少女イレーヌでした。

見どころ

赤みがかった長い髪

少女イレーヌの豊かな髪が、やわらかな筆致で描かれています。当時8歳だった彼女の肖像は、絵画史上もっとも有名な少女像の1つといわれます。

あどけない表情

1880年の夏、パリのカーン・ダンヴェール家の庭で描かれました。あどけない表情には、印象派らしい柔らかな筆遣いが生きています。

庭を思わせる背景

背景には庭のやわらかな色調が広がり、少女の姿を引き立てています。

冷遇された長女の肖像

本作は1880年の夏、パリ16区のユダヤ人銀行家カーン・ダンヴェール家の庭で描かれました。しかし依頼主一家はこの肖像画を気に入らず、長らく使用人部屋に飾られるという扱いを受けています。

妹たちの肖像とその代償

ルノワールは当初、イレーヌの肖像に続けて妹2人もそれぞれ1枚ずつ描く契約でした。しかし依頼主はイレーヌの絵を気に入らなかったため、次女エリザベートと三女アリスは1枚の絵にまとめて描くよう求められます。1枚1,500フラン、3枚で4,500フランの約束は、2枚3,000フランに減らされ、支払いも滞ったと伝わっています。

戦争を越えた来歴

第二次世界大戦中、本作はナチス・ドイツに没収され、ヘルマン・ゲーリングのコレクションとしてベルリンに保管されました。戦後、特殊部隊が回収・修復し、1946年にフランスで開かれた展覧会を経て、当時74歳のイレーヌのもとへ返還されています。しかしその3年後の1949年、イレーヌは本作を競売にかけ、武器商人エミール・ゲオルク・ビュールレが落札しました。

よくある疑問

『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』はどこにある?

チューリッヒ美術館(ビュールレ・コレクション)が所蔵しています。もとは旧ビュールレ邸の私設美術館にありましたが、2020年に新設された別館へ移管されました。

モデルは誰?

パリのユダヤ系銀行家カーン・ダンヴェール伯爵家の長女、当時8歳のイレーヌです。19歳でモイーズ・ド・カモンドと結婚し、91歳まで生きました。

なぜ使用人部屋に飾られていた?

依頼主(母ルイーズと推定されています)がこの絵を気に入らなかったためです。当初は1人ずつ3枚描く契約でしたが、次女と三女は1枚にまとめるよう求められ、代金も目減りしたと伝わっています。

ナチスに奪われた話は本当?

第二次世界大戦中にナチス・ドイツに没収され、ヘルマン・ゲーリングのコレクションとしてベルリンに保管されていました。戦後、特殊部隊が回収・修復し、1946年の展覧会を経て、当時74歳のイレーヌのもとへ返還されています。

基本データ

制作年
1880年
種別
絵画
技法・素材
油彩、カンヴァス
寸法
65 × 54 cm
所蔵
チューリッヒ美術館(チューリッヒ)

ピエール=オーギュスト・ルノワールのほかの作品

《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》 《舟遊びをする人々の昼食》

出典・画像について

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