
点描のスーラが初めて夜の場面に挑んだ作品です。1888年のサロン発表時は「もっとも評価されなかった作品」のひとつでしたが、黄金比が使われているという説は現在では否定されています。1990年、館内でガス灯に似た色の光を当てて調査したところ、不自然に見えたオレンジの顔が肌色に変わる現象が確認されました。
見どころ
手前で影になる楽団
コルネットやトロンボーンを構える演奏者たちが、整然と横一列に並んでいます。手前の人物は光が当たらず暗い青で塗られ、奥のガス灯に照らされた人物は明るく浮かび上がるという光の対比で奥行きが表現されています。
9つのガス灯が作る夜の光
舞台には9つのガス灯が置かれ、それぞれが淡い青紫のもやをまとって描かれています。チケット売り場の窓越しには5つの黄白色のランプも見えます。人工の光だけで演出された、スーラ初の夜景です。
階段前で演じる少年
中央の階段の上、舞台前面には襟を波打たせた少年が立って演じています。奥のチケット売り場の扉は、少年とは異なる奥行きの面に配置されています。
発表当時は不評だった夜景
この作品は1888年、アンデパンダン展にフランス語の原題「パラード・ド・シルク」として出品されましたが、スーラの作品のなかでもっとも評価されなかった1点になりました。同じ会場に出品されたより大きな『ポーズする女たち』の陰に隠れ、批評家ギュスターヴ・カーンからは「わざと青白く、悲しげ」と評されています。スーラ自身もこの絵を軽視していたようで、1890年に自らまとめた代表作リストには含まれていません。
エジプト美術を思わせる幾何学
水平線と垂直線が画面を支配し、エジプトの浮き彫りやフレスコ画を思わせる構成になっています。ただしエジプト美術のように大きさを変えて遠近を示すのではなく、スーラは光の当たり方によって人物の位置を示しました。手前の人物は影のなかに、ガス灯の向こうに立つ人物は明るく照らされて描かれています。
のちの前衛芸術への影響
発表当時は不遇でしたが、この絵はのちにフォーヴィスム、キュビスム、未来派、オルフィスムの画家たちに影響を与えたとされています。1910年代にキュビストたちの関心がスーラの平面的で線的な構造に向かったこともあり、彼の作品や複製画はパリで広く出回るようになりました。美術史家ピエール・クルティオンは、この絵を「19世紀絵画のなかで、疑いなくキュビスムを予告した唯一の作品」と評しています。
よくある疑問
- 『サーカスの客寄せ』はどこにある?
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ニューヨークのメトロポリタン美術館の所蔵です。展覧会などでの貸し出しは限られています。
- 誰が描いた?
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ジョルジュ・スーラです。点描技法を用いる新印象派を代表する画家で、この絵の制作にほぼ6年をかけました。
- 何が描かれている?
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パリ東部の下町、ナシオン広場に出ていたコルヴィ・サーカスの客寄せ興行(パレード)の場面です。楽団と曲芸師が舞台の上でチケット購入者を呼び込み、階段の下には切符を買い求める人々の列が描かれています。
- 黄金比が使われているって本当?
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本作をめぐっては、黄金比(1対1.6)による幾何学的な設計があるという説が長く語られてきました。しかし現在の美術史家の見解では、スーラがこの絵で実際に黄金比を用いたという説は否定されています。画面に引かれた縦の分割線は、単純な比率でおおよそ黄金比に近づいているだけとされています。
基本データ
- 作者
- ジョルジュ・スーラGeorges Seurat
- 制作年
- 1887〜1888年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 99.7 × 149.9 cm
- 様式
- 新印象派
- 所蔵
- メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
- 展示室
- 印象派以後
ジョルジュ・スーラのほかの作品
《グランド・ジャット島の日曜日の午後》 《アニエールの水浴》
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル