
注文した収集家は代金を払わず絵を引き取りませんでした。1000フランで売られた絵はその後30年で値上がりを重ね、80万フランでフランスの実業家に落札されます。祈りを捧げる場面なのに十字架もキリスト像も描かれておらず、土の下に赤ん坊の棺が埋まっているとサルバドール・ダリが主張しましたが、X線写真の見間違いでした。
見どころ
祈りを捧げる夫婦
晩鐘を聞いた農民夫婦が農作業の手を止め、頭を垂れて祈りを捧げています。夫は帽子を取っているだけで祈ってはいないという見方もあり、当時の農村で宗教的な役割を女性が担っていた現実を示すとも解釈されています。
手にした帽子
夫は両手で帽子を持ち、胸の前に構えています。サルバドール・ダリはこの男を交尾のあとメスに食べられる運命のオスのカマキリに見立て、股間を帽子で隠しているという独特な解釈を示しました。
じゃがいもの籠
夫婦の足元には掘り出したじゃがいもの籠が置かれています。ダリはX線写真をもとにここに赤ん坊の棺が埋まっていると主張しましたが、ミレーが籠の位置を描き直した跡が下描きと重なって見えていただけでした。
祖母の思い出として
1865年にパリで展示された際、ミレーはこの絵を祖母の思い出として描いたと語っています。祖母は畑仕事の最中に鐘の音を聞くと必ず手を止めさせ、帽子を手に「憐れむべき死者たちのために」と祈らせていました。ミレー自身はカトリックの家庭で育ちましたが、絵には十字架や聖人像といった宗教画特有のモティーフは描かれていません。
大西洋を挟んだ争奪戦
完成後、注文主のアップルトンは絵を引き取りに来ませんでした。ミレーは1860年に男爵へ1000フランで売却し、その後ブリュッセルやパリの収集家の手を転々とします。1889年の競売ではフランスとアメリカが競り合い、フランス美術局長が55万3000フランで落札したものの議会が支出を認めず、次点だったアメリカ美術協会が獲得しました。
フランスへの帰還
本作品は一度ニューヨークへ渡り、アメリカ各地で熱狂的に歓迎されました。しかし1890年、フランスのデパート経営者アルフレッド・ショシャールが80万フランで買い戻し、1909年にルーヴル美術館へ寄贈しています。1000フランからおよそ800倍にまで値上がりした末の帰還でした。
よくある疑問
- 『晩鐘』はどこにある?
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フランス・パリのオルセー美術館の所蔵です。1909年にルーヴル美術館へ寄贈され、1986年にオルセー美術館へ移管されました。
- 何が描かれている?
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シャイイ=アン=ビエールの平原で、農作業をしていた夫婦が晩鐘を聞いて手を止め、「お告げの祈り(アンジェラス)」を捧げる場面です。夫婦の足元には掘り出したじゃがいもの籠が置かれています。
- なぜ十字架やキリスト像が描かれていないの?
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はっきりした理由はわかっていません。制作を注文したトマス・ゴールド・アップルトンはリベラルなプロテスタント、ユニテリアン主義を信仰していたため、その意向が反映された可能性が指摘されています。
- 土の中に棺が埋まっているというのは本当?
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本当ではありません。サルバドール・ダリはX線写真をもとに堕胎した嬰児の棺が埋まっていると主張しましたが、実際にはじゃがいもの籠を描き直した跡が下描きと重なって見えていただけでした。
基本データ
- 作者
- ジャン=フランソワ・ミレーJean-François Millet
- 制作年
- 1857〜1859年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 55.5 × 66 cm
- 所蔵
- オルセー美術館(パリ)
- 展示室
- 近代
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出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル