
2005年、イギリス国内で最も人気のある絵画に選ばれました。2020年発行の新20ポンド紙幣の裏面にも描かれています。しかし実際は2隻のタグボートで逆方向に曳かれていたのに対し、ターナーは1隻だけを描き、方角も変えて、時代の終わりを象徴的に表現しました。
見どころ
幽霊のような戦艦
画面左に浮かぶ白っぽいテメレール号は、青空と霧の三角形の中に堂々とした姿で描かれています。船体は幽霊のような色合いで表現されています。
黒く汚れたタグボート
高い煙突を持つ黒く汚れたタグボートが、静かな川面を揺らしながらテメレール号を曳いています。老いた戦艦の美しさと対照的な存在です。
沈む太陽と昇る月
テメレール号の反対側の河口には太陽が沈み、雲や水面を赤く染めています。テメレール号の背後では月が昇り、新しい産業の時代の始まりを暗示しています。
実際の光景からの改変
テメレール号は実際には2隻のタグボートで、しかも逆方向に曳航されていました。しかしターナーは1隻だけを描き、方角も変えています。マストや艤装、大砲は売却前にすでに取り外されていましたが、絵では帆船時代の威容そのままに描かれています。
サッカレーが称えた壮大さ
1839年のロイヤル・アカデミー展で発表されると、大きな反響を呼びました。小説家ウィリアム・メイクピース・サッカレーはいつもの軽妙な調子を捨て、画家のイーゼルから出てきてアカデミーの壁に描かれたような絵だと評しています。
手放さなかった「ダーリン」
ターナーはこの絵を「ダーリン」と呼び、死ぬまで自分のアトリエに置いていました。1848年ごろには5,000ポンドともいわれる買い取りの申し出や、額面のない小切手も断っています。国民のために絵を残す意志があったとされています。
よくある疑問
- 『戦艦テメレール号』はどこにある?
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ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵しています。1851年にターナーから同館に遺贈され、以来ほぼそこに展示されてきました。
- 描かれているのは実話?
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トラファルガーの海戦で活躍した戦列艦テメレーアが、退役後の1838年にスクラップとして解体されるため、タグボートでテムズ川を曳航された出来事にもとづいています。ただしターナーは船の隻数や進行方向など、実際の光景から改変を加えています。
- なぜタイトルに「テメレール」とあるの?
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原題の「戦うテメレール」は、トラファルガーの海戦での奮闘をたたえた愛称です。実際の乗組員の間では「ソーシー」という愛称でも呼ばれていました。
- 紙幣に描かれたことがある?
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2020年にイングランド銀行が発行した新20ポンド紙幣の裏面に、ターナーの自画像とともにこの絵が描かれています。あわせてターナーの講義からの引用文と遺書の署名も印刷されています。
基本データ
- 作者
- ジョーゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーJ. M. W. Turner
- 制作年
- 1839年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 90.7 × 121.6 cm
- 様式
- ロマン主義
- 所蔵
- ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
- 展示室
- 近代
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出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル