
ラファエロが円形の「トンド」という珍しい形で描いた聖母子像です。教育者マリア・モンテッソーリは、この絵を母子の愛情の象徴として、世界中の「子供の家」に飾られることを願ったと伝えられています。19世紀の画家アングルは、自分の作品の背景に何度もこの絵を描き込んでいます。
見どころ
円形に収まる聖母子
幼子キリストを抱きしめる聖母マリアと、幼児洗礼者聖ヨハネの3人が、円形のトンドという形式の中に収められています。
敬虔に見つめるヨハネ
幼い洗礼者聖ヨハネは、聖母子を敬虔な表情で見つめています。マリア・モンテッソーリはこの構図を母子の愛情の象徴とみなしました。
暖色を基調にした色使い
フィレンツェ時代の厳格な様式美とは異なり、暖色系の色使いが特徴です。ティツィアーノやセバスティアーノ・デル・ピオンボからの影響が指摘されています。
フィレンツェ時代との作風の違い
『小椅子の聖母』は、ラファエロのキャリア後期「ローマ時代」の作品です。同じ聖母子のモチーフでも、キャリア中期の「フィレンツェ時代」に描かれた厳格な様式美の作品とは、まったく異なる作風になっています。暖色系の色使いには、当時の競争相手だったセバスティアーノ・デル・ピオンボや、ティツィアーノからの影響の可能性が指摘されています。
母子の愛情の象徴として
医学者でモンテッソーリ教育の創始者マリア・モンテッソーリは、この絵を母マリアの母性と幼児ヨハネの親愛の情の象徴とみなし、世界中の「子供の家」に飾られることを願ったと伝えられています。19世紀の画家アングルもラファエロを高く評価しており、自作の中にこの絵を繰り返し描き込んでいます。『子供と遊ぶアンリ4世』や『ラファエロとフォルナリーナ』の背景の壁に描いたほか、『リヴィエール氏の肖像』ではテーブルに置かれた紙に、『玉座のナポレオン』では絨毯の模様にこの絵をデザイン化しています。
よくある疑問
- 『小椅子の聖母』はどこにある?
-
イタリア・フィレンツェのピッティ宮殿内、パラティーナ美術館に所蔵されています。
- 「トンド」とは何?
-
円形の額や画面に描かれた絵画の形式のことです。本作は幼児キリストを抱く聖母マリアと幼児洗礼者聖ヨハネの3人が、円の中に描かれています。
- いつ頃描かれた?
-
ラファエロのキャリア後期にあたる「ローマ時代」、1513年から1514年ごろに描かれたとされています。キャリア中期の「フィレンツェ時代」に描いた同様のモチーフの作品とは、作風がまったく異なります。
- 後世の芸術家に影響を与えた?
-
19世紀の新古典主義の画家ドミニク・アングルが、自身の複数の作品の背景や小物にこの絵を描き込んでいます。ラファエロを高く評価していたことの表れとされています。
基本データ
- 作者
- ラファエロ・サンティRaphael
- 制作年
- 1513〜1514年ごろ
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、板
- 寸法
- 71 × 71 cm
- 様式
- 盛期ルネサンス
- 所蔵
- パラティーナ美術館(フィレンツェ)
- 展示室
- ルネサンス
ラファエロ・サンティのほかの作品
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル