
この作品のデータ
| 作者 | ジェームズ・マクニール・ホイッスラー | |
|---|---|---|
| 制作年 | 1871年 | |
| 時代 | 印象派以後 | 同じ時代の作品 105点 |
| 様式 | トーナリズム | |
| 種別 | 絵画 | |
| 技法・素材 | 油彩、カンヴァス | |
| 所蔵 | オルセー美術館パリ | 同じ所蔵の作品 29点 |
| 有名度 | ★★★名画クイズで出題(全作品の解放) |
《灰色と黒のアレンジメント 第1番》は、ホイッスラーが1871年に母アンナを描いた油彩画で、通称《ホイッスラーの母》として知られます。オルセー美術館が所蔵し、アメリカの記念切手の図案にもなりました。ところが画家本人は、この絵を「肖像画」として見られることに困惑し、苛立っていたと語っています。
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見どころ
「肖像画」ではなく構成
正式な題名は『灰色と黒のアレンジメント 第1番』(Arrangement in Grey and Black No. 1)です。ホイッスラーは「母の絵として興味深いのはわかるが、公衆がモデルの正体を気にする必要があるだろうか」と述べ、色と形の構成として見てほしいと語っています。
立ち姿から座り姿へ
ホイッスラーは当初、モデルを立たせて描くつもりでした。しかし母のアンナは長時間立ち続けるのがつらく、座った姿での制作になったといういきさつが伝えられています。
王立芸術院、ぎりぎりの展示
1872年のロンドン王立芸術院展に出品されましたが、落選すれすれのところで展示が決まりました。この作品を最後に、ホイッスラーは芸術院への出品をやめています。
「アレンジメント」という主張
ホイッスラーは「芸術のための芸術」を掲げ、自分の作品が「肖像画」として語られることに困惑と苛立ちを覚えていたと自著に書き残しています。1890年の著書では「母の絵として興味深いことはわかる。しかし公衆がモデルの正体を気にする必要があるだろうか」と述べています。もっとも、ヴィクトリア朝の観客にはこの主張は受け入れられず、「画家の母の肖像」という副題が加えられました。後にトーマス・カーライルが同じ構図で肖像を依頼し『灰色と黒のアレンジメント 第2番』として描かれたことで、この絵は結果的に「第1番」と呼ばれるようになりました。モデルの母アンナは当時、ロンドン・チェルシーの家で息子と暮らしていました。
画面の構成と壁の版画
母アンナは横向きで椅子に腰かけ、足を足台にのせています。画面は顔と手のほかは灰色と黒でほぼ占められ、オルセー美術館は中間色に抑えた色づかいと線の厳しさを、ホイッスラーが版画で続けてきた探究の延長と説明しています。壁に掛かる額はテムズ川の風景で、同館はこれを版画とのつながりを画面の中で示すものとしています。画面右上には画家のモノグラムが入っています。
手放された絵の、その後
ホイッスラーはこの絵を一時質に入れており、1891年にパリのリュクサンブール美術館が購入したことで、大きな美術館に自作が並ぶ喜びを味わったと手紙に書いています。以後、この絵はアメリカで母性や家族の象徴として広く用いられるようになりました。1934年にはアメリカ郵政省が肖像部分を図案にした記念切手を発行し、1938年には大恐慌下のペンシルベニア州アシュランドで、母への感謝を込めた高さ8フィートの像が建てられています。美術史家マーサ・テデスキは、この絵を『モナ・リザ』や『アメリカン・ゴシック』、『叫び』と並べ、専門知識がなくても意味がほぼ即座に伝わる数少ない作品の1つだと評しています。
読んだらクイズ
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立ち姿から座り姿へホイッスラーは当初、モデルを立たせて描くつもりでした。しかし母のアンナは長時間立ち続けるのがつらく、座った姿での制作になったといういきさつが伝えられています。
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よくある疑問
- 『ホイッスラーの母』はどこにある?
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パリのオルセー美術館が所蔵しています。1891年にフランス政府が購入してリュクサンブール美術館に収め、1922年にルーヴル美術館、1986年にオルセー美術館へ移りました。日本では横浜美術館が、この絵をもとにしたT.R.ウェイ製版のリトグラフ(15.0 × 16.9 cm)を所蔵しています。
- 『灰色と黒のアレンジメント 第2番』はどんな絵?
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思想家トーマス・カーライルの肖像(1872〜73年)です。この絵を見たカーライルが同じような構図で描かれることを承諾し、横顔で座る人物を暗い色調でまとめた構成が受け継がれました。第1番より少し大きい縦長の画面で、顔がわずかにこちらを向いています。スコットランドのグラスゴーにあるケルヴィングローヴ美術館が所蔵しています。
- なぜ「ホイッスラーの母」と呼ばれる?
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元の題名『アレンジメント』では、ヴィクトリア朝の観客に肖像画として受け入れられませんでした。そこで「画家の母の肖像」という説明的な副題が加えられ、ここから通称「ホイッスラーの母」が定着しました。
- 『灰色と黒のアレンジメント』とはどういう意味?
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画面の色の組み立てをそのまま題名にしたものです。ホイッスラーは作品に「アレンジメント」「ノクターン」など音楽を思わせる題名をつけ、描かれた対象よりも色の調和を見てほしいという考えを示しました。「画家の母の肖像」は、あとから添えられた副題です。
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出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル



