
描かれているのは画家モリゾの実の姉と、その娘。第1回印象派展に出品されたものの、当時800フランの値がついたこの絵は買い手がつきませんでした。母性を描いたモリゾの最初の作品で、以後たびたび取り組む主題の出発点になりました。
見どころ
娘を見つめる母の視線
母エドマが、揺りかごで眠る娘ブランシュを見つめています。母の視線から揺りかごの布地へと続く対角線が、構図の軸になっています。
呼応する2つの曲げた腕
母の左腕は曲げられ、揺りかごのなかで眠る赤ん坊の小さな腕も同じように曲げられています。この2つの腕が呼応し合うことで、対角線の構図がいっそう強調されています。
薄布ごしの眠り
揺りかごを覆う薄い布地ごしに、眠る赤ん坊の姿がやわらかく透けて見えます。限られた色数と流れるような筆致が、親密で穏やかな空気を伝えています。
マネの影響のもとで
この絵はモリゾの作品のなかで、母性という主題を扱った最初の例です。モリゾはこの主題をその後も繰り返し手がけることになります。画面には、モリゾが1868年にルーヴル美術館で出会った画家エドゥアール・マネの影響が見られるとされます。モリゾは1874年、マネの弟ウジェーヌと結婚しました。
家族のもとに留まり続けた絵
800フランの値をつけたにもかかわらず売れなかったこの絵は、その後長く家族のもとに留まり、モデルを務めた姪のブランシュ・ポンティヨンの手に渡りました。ルーヴル美術館が取得したのは1930年のことです。
「揺りかご」という題名がもつ意味
美術史家ドミニク・ロブスタンは、当時のサロンに出品された他の「眠る子ども」の絵と比較しながら、この絵の題名について、美的な革新である以上に、物語性を排して見る者を日常の延長として作品に引き込もうとする、題名のつけ方そのものの変化を示していると指摘しています。同じ時期、クロード・モネも息子を描いた『揺りかごのジャン・モネ』(1867年)を手がけており、こうした作品群は子ども時代を新しく描き直す試みだったとされています。
よくある疑問
- 『ゆりかご』はどこにある?
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パリのオルセー美術館の所蔵です。1930年にルーヴル美術館が取得し、1947年から1986年まではジュ・ド・ポーム美術館で展示され、オルセー美術館の開館後にそちらへ移されました。
- モデルは誰?
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モリゾの姉エドマ・ポンティヨンと、その娘ブランシュです。ブランシュは後にこの絵を受け継ぎ、所有者になりました。
- 誰が描いた?
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フランス印象派の画家ベルト・モリゾです。1872年に制作されました。
- 発表時の評判はどうだった?
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1874年4月15日、写真家ナダールの元アトリエで開かれた第1回印象派展に出品されました。優美さや美しさを評価する批評家もいましたが、大きな注目は集めず、モリゾはこの絵を売ることができませんでした。
基本データ
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル