依頼主は、ぶらんこを揺らす人物を聖職者として描くよう注文していました。しかしフラゴナールはこれを婦人の夫に変え、茂みに隠れて足元を見上げる愛人(依頼主本人がモデルとされる)と、口に指を立てて沈黙を促すキューピッド像を描き添えました。発表後は評判を呼び、版画に刷られて広く出回りました。
見どころ
宙を舞う靴
レースをあしらったピンクのシルクドレスをまとった若い婦人が、日差しの穏やかな緑豊かな庭園で、太い木の枝に結ばれたぶらんこに乗っています。揺れの勢いを使って、ピンク色の小さなミュールを前方に放り出しています。
茂みに潜む愛人
画面左端の下方では、貴族の男性が茂みの中で地面に肘をついて横たわり、婦人を見上げています。この男性のモデルは、絵を依頼した男爵本人とされています。
夫に変えられた綱引き役
画面右端下方では、ロープでぶらんこを揺らす初老の男性が描かれています。依頼では司教として描かれる予定でしたが、フラゴナールは婦人の夫に変更しました。手前には犬が、傍らには戸惑うような表情のキューピッド像が描かれています。
男爵が仕組んだ秘密の絵
『ぶらんこ』は、フランスの貴族サン=ジュリアン男爵からの依頼でフラゴナールが手がけた作品です。フランス語の原題は『ぶらんこの絶好のチャンス』といい、婦人のミュールが宙に飛ぶ瞬間を捉えた構図には、当初から際どい意味合いが込められていたとみられます。依頼で指定されていたぶらんこを揺らす人物の設定を、フラゴナールが夫へと変更したことも、この絵の遊び心を強めています。
版画から現代のスクリーンへ
発表された『ぶらんこ』はすぐに評判を呼び、版画として複製され広く出回りました。200年以上のちには、ブロードウェイ・ミュージカル『コンタクト』の開幕曲でほぼ同じ構図が再現されています。ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』のビジュアル作りや、『アナと雪の女王』でアナがぶらんこに乗る場面も、本作を下敷きにしていると紹介されています。
よくある疑問
- 『ぶらんこ』はどこにある?
-
ロンドンのウォレス・コレクションに所蔵されています。1865年に同館へ収められて以来、そこで展示されています。
- なぜぶらんこを揺らす人物が変更された?
-
依頼当初、ぶらんこを揺らす人物は司教として描かれる設定でした。しかしフラゴナールはこれを婦人の夫に変更して描いています。理由は伝わっていません。
- モデルは誰?
-
茂みの中から婦人を見上げる愛人役の男性は、この絵を依頼したサン=ジュリアン男爵がモデルになったとされています。婦人や夫のモデルについてはわかっていません。
- 後世の作品にどんな影響を与えた?
-
1999年にブロードウェイで初演されたミュージカル『コンタクト』の第一部は本作を題材にしています。映画『塔の上のラプンツェル』のビジュアルイメージづくりにも参照され、『アナと雪の女王』でアナがぶらんこをこぐ場面のベースにもなりました。
基本データ
- 作者
- ジャン・オノレ・フラゴナールJean-Honoré Fragonard
- 制作年
- 1767年
- 種別
- 絵画
- 様式
- ロココ
- 所蔵
- ウォレス・コレクション(ロンドン)
- 展示室
- バロック・ロココ
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル
