「微笑む騎士」という題名は、ヴィクトリア朝時代の民衆と新聞が作った呼び名です。実は笑っておらず、上を向いた口髭で強調された謎めいた微笑みを浮かべているだけです。モデルの人物は今も特定されていません。豪華な黒いサッシュの描写に、ゴッホは「フランス・ハルスは27種類の黒色を持っている」と言わしめました。
見どころ
謎めいた微笑み
モデルは実際には笑っておらず、上を向いた口髭で強調された微笑みを浮かべているだけです。どの角度から見ても鑑賞者を見つめ返しているような視線の効果があります。
刺繍された袖
袖の刺繍には蜂や矢、炎を噴くコルヌコピアなど「愛の喜びと苦しみ」を象徴する図柄が織り込まれています。オベリスクは力を、メルクリウスの帽子は幸運を表しています。
27種類の黒
黒いサッシュの描写は、限られた色数で豊かな階調を生み出しています。この技術に感嘆したファン・ゴッホは「フランス・ハルスは27種類の黒色を持っている」と評しました。
民衆が生んだ愛称
作品の題名「微笑む騎士」は、1872年から1875年にかけてベスナル・グリーン博物館で公開展示された際に、ヴィクトリア朝の民衆と新聞によって生まれました。当時この絵はイングランドにもたらされたばかりで、定期的に版画化され、イギリスで最もよく知られたオールド・マスター絵画の1つになりました。
珍しい「笑う肖像画」
18世紀末になるまで、笑い顔はトローニー(特定の人物ではなく表情やポーズを描く習作)や風俗画で見られましたが、委嘱された肖像画で大人が笑う姿を表すことはまれでした。フランス・ハルスは例外的な画家で、しばしば本作よりも大きく笑う人物を、動きと自然さをともなう打ち解けた姿勢で描いています。
大衆文化への引用
『微笑む騎士』はビール会社マクエワンズのロゴに使われ、小説『紅はこべ』シリーズでは主人公の先祖として登場します。テレビ番組『シャーロック・ホームズのライヴァルたち』や『ザ・モンキーズ』でも題材にされました。
よくある疑問
- 『微笑む騎士』はどこにある?
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ロンドンのウォレス・コレクションが所蔵しています。1865年のパリでの競売で第4代ハートフォード侯爵が競り落とし、その息子リチャード・ウォレス卿の遺贈を経て、妻によって国家に寄贈されました。
- モデルは誰?
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特定されていません。美術史家ピーテル・ビースブールはオランダの布地商ティーレマン・ロ―ステルマンだと提案していますが、この人物はハルスの別の肖像画(クリーブランド美術館所蔵)にすでに登場しており、確定はしていません。
- なぜ「騎士」と呼ばれているの?
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19世紀のオランダ語・英語・フランス語の作品名は、モデルが軍人か少なくとも警備隊の士官であることを示唆していました。しかし富裕な市民だった可能性も指摘されており、実際の身分ははっきりしません。
- 本当に笑っているの?
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笑っていません。上を向いた口髭が強調しているのは、微笑みというより謎めいた表情です。1884年の洗浄以降、画面が明るくなったことで、笑っているというより微笑んでいることに批評家が気づいたと記録されています。
基本データ
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル
