
『赤富士』と呼ばれますが、朝日を示す描写はどこにもありません。朝日なら山頂の雪も赤く染まるはずですが、そうはなっていないためです。実は『凱風』とは、夏に吹く柔らかな南風を意味する言葉です。
見どころ
赤く染まった山肌
快晴の空の下、赤褐色に染まった富士の山肌が画面いっぱいに描かれています。山頂には雪渓が残り、白く抜かれています。
空を覆ういわし雲
空には、うろこ状に広がるいわし雲が描かれています。『富嶽三十六景』のうち、富士を大きく正面から描いた図のひとつです。
画面下の樹海
画面下部には樹海が横に広がっています。富士の稜線と対比するように、平らな線で描かれています。
三大役物のひとつ
『凱風快晴』は、葛飾北斎の名所浮世絵揃物『富嶽三十六景』全46図のうちの1図です。『神奈川沖浪裏』『山下白雨』と合わせて三大役物と呼ばれ、富士を大きく正面から描いた作品として『山下白雨』と並び称されます。
先行する赤富士の絵
本図より前に、野呂介石が描いた『紅玉芙蓉峰図』など、赤い富士を描いた先行例があり、北斎に影響を与えた可能性が指摘されています。刊行時期には諸説あり、天保元年(1830年)から天保5年(1834年)ごろとされるほか、文政年間(1823〜1829年)とする説もあります。北斎は『富嶽三十六景』に先立つ文化13年(1816年)刊行の『北斎漫画五編』にも、無題ながら富士を主題とした作品を載せています。
描く場所をめぐる論争
本図が甲斐国側から見た富士なのか、駿河国側から見た富士なのかは結論付けられていません。地形解析ソフトを使った研究では、山稜の勾配や残雪の特徴から富士吉田市や三ツ峠からの眺めに近いとする説がありますが、確定した結論には至っていません。
よくある疑問
- 『凱風快晴』はどこで見られる?
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版画のため原本は1点だけではありません。この記事はアメリカのインディアナポリス美術館が所蔵する一枚をもとにしています。サイズは25.0×36.8cmの大判錦絵です。
- なぜ『赤富士』と呼ばれる?
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山肌が赤く彩られているためにこの通称で呼ばれます。ただし朝日で赤く染まっているなら雪も赤く摺られるはずですが、そうなっていません。快晴の空の下で照らされる山肌を強調するために赤くしたという見方があります。
- 「凱風快晴」とはどういう意味?
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『凱風』は、中国の古典『詩経』などに由来する、夏に吹く柔らかな南風を指す言葉です。快晴の空の下、富士山を捉えた図とされています。
- どこから見た富士山?
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甲斐国側から見たものか、駿河国側から見たものか、結論は出ていません。地形解析から富士吉田市や三ツ峠からの眺めに近いとする説もありますが、確定していません。
基本データ
- 作者
- 葛飾北斎Katsushika Hokusai
- 制作年
- 天保年間(1830〜1834年頃、諸説あり)
- 種別
- 浮世絵
- 技法・素材
- 多色摺木版画(大判錦絵)
- 寸法
- 25.0 × 36.8 cm
- 所蔵
- インディアナポリス美術館(アメリカ)
- 展示室
- 日本・近世まで
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出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル