
フラ・アンジェリコが描いた『受胎告知』。祭壇画ではなく、サン・マルコ修道院の階段の壁に直接描かれたフレスコ画です。屋外の回廊で大天使ガブリエルが聖母マリアを訪ねるこの構図を考えたのはこの画家が最初とされ、金箔も高価な顔料も使っていません。
見どころ
画面を分ける中央の柱
前景の柱が画面を左右に分け、ガブリエルとマリアをそれぞれの空間に置いています。柱は2人を隔てると同時に、視線でつなぐ役目も果たしています。アーチを支える列柱はイオニア式とコリント式が組み合わされています。
翼を下ろすガブリエル
ピンク色と金色で描かれたガブリエルは、マリアを見つめながら多色の翼をたたもうとしています。両腕を胸の前で交差させる仕草は、マリアに向けたジェスチャーとして描かれています。
青い衣のマリア
マリアはガブリエルと向き合って座り、女王の地位と純潔を示す青い衣をまとっています。ガブリエルと同じように腕を曲げていますが、この仕草は驚きよりも受容と謙虚さを表しています。
屋外の構図を考えた画家
それまでの『受胎告知』は、屋内で玉座に座るマリアをガブリエルが訪ねる構図が一般的で、人物は平面的で静的に描かれていました。フラ・アンジェリコは、屋外の回廊でガブリエルがマリアに近づく構図を考案した画家として認められています。この作品でも列柱の消失点が空間の奥行きをつくり、以前の絵にはなかった現実感を生んでいます。
塀で囲まれた庭が画面の奥に描かれています。中世以来、閉ざされた庭はマリアの無垢と処女性を象徴する図像として使われてきました。フラ・アンジェリコはこの伝統的な意味を保ちながら、庭の細部を注意深く観察して描いています。
修道院を彩った約50点
コジモ・デ・メディチがサン・マルコ修道院を再建した際、フラ・アンジェリコに壁面の装飾を依頼しました。祭壇画、独房の内部、回廊、参事会集会所、廊下まで含めて全部で約50点にのぼり、すべてが画家自身の手によるか、その直接の監督のもとで描かれたとされています。
フラ・アンジェリコはこの主題を好み、この階段のフレスコ画のほかにも、修道士の独房の中に別の『受胎告知』を描いています。祭壇画としての『受胎告知』も複数手がけており、それらはプラド美術館などに分かれて所蔵されています。
よくある疑問
- 『受胎告知』(フラ・アンジェリコ)はどこにある?
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イタリア・フィレンツェのサン・マルコ美術館にあります。かつての修道院の1階、寮に上がる階段の最上部の壁に直接描かれたフレスコ画で、持ち運びのできる絵ではありません。
- 誰が描いた?
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イタリア・ルネサンス期の画家フラ・アンジェリコです。サン・マルコ修道院にはこの画家がほぼ全面的に手がけた約50点のフレスコ画があり、この『受胎告知』はその中でもっともよく知られた1点とされています。
- なぜこんなに質素な色使いなの?
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金箔と高価な顔料アズライトは、修道院の後援者コジモ・デ・メディチの独房と、来客も使う公共空間のためだけに使われました。修道士が祈るためだけに使う独房や廊下の絵は、意図して控えめな色彩にとどめられています。
- 何のためにこの場所に描かれた?
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階段の上という薄暗い場所に置かれたのは、この絵が装飾ではなく瞑想と祈りのためだったからです。フレスコ画の下には「汚れなき聖母マリアのお姿を前にしたら、必ずアヴェ・マリアの祈りを唱えよ」という碑文があり、毎日そこを通る修道士に祈りを促していました。
基本データ
- 作者
- フラ・アンジェリコFra Angelico
- 制作年
- 1440〜1445年頃
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- フレスコ、壁画
- 寸法
- 230 × 297 cm
- 様式
- イタリア・ルネサンス
- 所蔵
- サン・マルコ美術館(フィレンツェ)
- 展示室
- ルネサンス
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル