
この作品のデータ
| 作者 | 作者不詳(伝 藤原隆能) | |
|---|---|---|
| 制作年 | 平安時代末期(1119〜1150年頃) | |
| 時代 | 日本・近世まで | 同じ時代の作品 42点 |
| 様式 | やまと絵 | 同じ様式の作品 5点 |
| 種別 | 絵巻 | 同じ種別の作品 5点 |
| 技法・素材 | 紙本著色、絵巻 | |
| 所蔵 | 徳川美術館名古屋 | |
| 有名度 | ★★★名画クイズの無料の54点に収録 | |
| 展覧会 | 特別展 源氏物語 王朝のかがやき京都国立博物館 平成知新館(京都府)2026年10月6日(火)〜11月29日(日) | 開催中 |
| 展覧会 | 国宝 源氏物語絵巻 横笛・宿木(二)徳川美術館(愛知県)2026年11月14日(土)〜11月29日(日) | これから |
| 展覧会 | 特別展「源氏物語 王朝のかがやき」東京国立博物館 平成館(東京都)2027年1月19日(火)〜3月14日(日) | これから |
平安時代の宮廷絵師・藤原隆能の作と伝わり『隆能源氏』と呼ばれてきましたが、隆能が描いたという確証はありません。江戸時代の鑑定家が言い出したとされる呼び名で、広まったのは明治以降です。全54帖を描いたと考えられる絵巻のうち、残るのは絵19面・詞37面ほど。徳川美術館と五島美術館に分かれて伝わる国宝です。
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見どころ
屋根のない室内(吹抜屋台)
屋根や天井を省き、上からのぞきこむように室内を描く『吹抜屋台』という技法が使われています。寝殿造の建物の中の様子を、視点を遮るものなく見せる工夫です。
線と点だけの顔(引目鉤鼻)
登場人物の顔は、目を一本の線、鼻を「く」の字で表す『引目鉤鼻』という様式で描かれています。表情を細かく描き分けるのではなく、型に沿って人物を表す手法です。
斜めに配された長押と几帳
長押(なげし)や几帳(きちょう)を画面の左右に斜めに配置する構図が多用されています。寝殿造の建物の奥行きと空間性を、限られた画面の中に表現する技法です。
隆能源氏という呼び名の謎
『隆能源氏』という呼び名は、江戸時代の鑑定家・住吉広行が『倭錦』の中で言い始めたものとされています。この呼び方が広まったのは明治時代以後のことで、それ以前から定着していた名称ではありません。
藤原隆能の経歴と記録に残る仕事
藤原隆能は、平安時代後期に宮廷で活躍した貴族の絵師です。蔵人を務め、宮廷の絵画制作を担う絵所の長である絵所預に任じられました。生没年はわかっていません。
記録に残る仕事には、1147年(久安3年)に藤原忠実の70歳の祝いのために作られた蒔絵硯箱の絵様(下絵のデザイン)、1154年(仁平4年)に鳥羽の金剛心院阿弥陀堂の扉に描いた『九品来迎図』、鳥羽上皇の肖像画があります。金剛心院の扉絵の功で正五位下に叙され、翌1155年には三河守になりました。
ただし、これらの記録の中に『源氏物語絵巻』に関わったことを示すものはありません。同時代の日記『長秋記』などにも関与の記述はなく、隆能は主に近衛天皇の時代に活躍した人物であるため、12世紀前半から中頃とされる絵巻の制作時期とは合わないと考えられています。美術史家の秋山光和は、人物の顔の描き方などから絵を4つのグループに分け、複数の絵師による共同制作と推定しました。
あらゆる技法を尽くした料紙
背景には、茶色のつけ染めや紫・丁字などでの隈ぼかし、胡粉や雲母、金銀の切箔、砂子、野毛、葦手をまじえた描き文様など、あらゆる技法が使われています。これらによって遠山や水辺の景、霞や団雲などが表現されています。
額装から巻物へ
もとは巻物だった本絵巻は、1932年(昭和7年)、保存上の配慮から詞書と絵が切り離され、額装に改められました。徳川本は2018年(平成30年)、台紙の反りや紙の亀裂といった保存上の理由から、再び巻子本に表装し直されています。2015年には、修理の過程で徳川本の3面から構図の異なる下絵が見つかったことも発表されました。
よくある疑問
- 『源氏物語絵巻』はどこで見られる?
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現存する部分は、名古屋市の徳川美術館と東京・世田谷区の五島美術館に分かれて所蔵されており、いずれも国宝に指定されています。
- 誰が描いた?
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作者はわかっていません。絵師を藤原隆能と伝えることから『隆能源氏』と呼ばれてきましたが、隆能の活動時期と本絵巻の制作推定時期は合わず、同時代の史料にも彼の関与を示す記録はありません。
- 藤原隆能とはどんな人?
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平安時代後期の宮廷絵師です。蔵人を務め、宮廷の絵所を束ねる絵所預に任じられました。1154年(仁平4年)に鳥羽の金剛心院阿弥陀堂の扉絵を描いて正五位下に叙され、翌1155年には三河守になっています。生没年はわかっていません。
- どのくらい残っている?
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本来は源氏物語の全54帖を絵画化した、10巻程度の絵巻だったと推定されています。現存するのは徳川美術館の絵15面・詞28面、五島美術館の絵4面・詞9面と、東京国立博物館などにある断簡のみです。
- 『源氏物語絵巻』という名前の絵巻は他にもある?
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数多くあります。狩野尚信、久隅守景、狩野栄川によるものなどが知られていますが、現存する中では徳川・五島本が最も古く、著名です。単に『源氏物語絵巻』と呼ぶ場合、通常はこの徳川・五島本を指します。
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル
