
1884年のサロン初出品時、右肩のストラップが外れかけて描かれていたため「あと一息でその女性は露わになるだろう」と評され、大スキャンダルになりました。批判に打ちのめされたサージェントは、のちにストラップを塗り直して肩に固定し、パリを去ってロンドンへ移住しています。
見どころ
際立つ横顔と白い肌
夫人は鼻を強調した鋭い横顔で描かれ、広い額から首、両肩にいたるまで白い肌が広がっています。「貴族的な蒼白さ」という工夫が施された色調です。
宝石のショルダーストラップ
黒いサテンのドレスには、宝石で飾られたショルダーストラップが付けられています。発表時はこのストラップが右肩から垂れ下がった状態で描かれていました。
身体を支えるテーブル
夫人は右腕を低いテーブルに置き、身体を支えるように後ろへ伸ばしています。テーブルの脚を飾るのはギリシア神話のセイレンです。
依頼ではなく口説き落とした肖像
ゴートロー夫人は画家たちの肖像画依頼を何度も断ってきましたが、1883年2月、サージェントの申し出を受け入れました。サージェントは友人への手紙に「彼女の肖像画を描きたいと強く望んでいる」と記しています。制作は難航し、夫人は座っていることに退屈し、約30点もの素描が試みられました。
サロンで巻き起こった非難
1884年のサロンで公開されると、大衆はショックを受け憤慨しました。夫人の母親はサージェントに展覧会からの取り下げを要求しましたが、画家は「彼女が着ていたのとまったく同じように描いた」として拒否しています。世間の反応の悪さは画家と夫人の双方を打ちのめし、サージェントはまもなくロンドンへ永久に移住しました。
20年後の評価
サージェントは肖像画を長く非公開にしていましたが、肖像画家として広く認められるようになると、モデルを美しく描く画家としての力を宣伝する作品として国際展覧会に出展するようになります。1916年、サージェントは「私がこれまでに制作した絵画の中で最高のものだと思います」という言葉とともに、メトロポリタン美術館への売却を申し出ました。
よくある疑問
- 『マダムXの肖像』はどこにある?
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ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵しています。未完成の習作バージョンはロンドンのテート・ブリテンにあります。
- モデルは誰?
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パリ社交界で名高かった、アメリカ出身のヴィルジニー・アメリー・アヴェーニョ・ゴートロー夫人です。
- なぜ「マダムX」という匿名のタイトル?
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サロン出品時のタイトルは『***夫人の肖像』でしたが、それが誰であるかは大衆の目に明らかでした。スキャンダル後、サージェントはより断定的で非個人的な印象を与える『マダムX』へと改題しています。
- ストラップは今もそのままなの?
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サロン後、サージェントは垂れ下がっていた右肩のストラップを塗り直して肩に固定した状態にしました。そのまま20年以上、公開されることなく自身のアトリエに保管されています。
基本データ
- 制作年
- 1883〜1884年
- 種別
- 絵画
- 技法・素材
- 油彩、カンヴァス
- 寸法
- 208.6 × 109.9 cm
- 様式
- 写実主義
- 所蔵
- メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
- 展示室
- 印象派以後
出典・画像について
画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル