テンペスタ

ジョルジョーネ《テンペスタ》1506〜1508年頃
テンペスタThe Tempest
1506〜1508年頃
油彩、カンヴァス、83 × 73 cm
アカデミア美術館(ヴェネツィア)
何がすごいのか

何が描かれているのか、当時の信頼できる記録は一切残っていません。エジプトへの逃避、パリスとオイノネ、単なる牧歌など、解釈は今も分かれたままです。X線調査では、男が立つ場所に元は別の裸婦が描かれていたことがわかっています。

見どころ

杖を持つ男

画面左には、長い杖か槍のようなものを持って立つ男が描かれています。兵士、羊飼い、ジプシー、独身貴族など、美術史家によって解釈が分かれています。背後の柱は壊れており、死を意味するとの説もあります。

授乳する半裸の女性

画面右には、乳児に母乳を与える座った女性が描かれています。母親の役割が神聖なものというより、日常的なものであることを示唆しているとされます。ジプシーの女、あるいは売春婦だとする説もあります。

遠くの稲妻と町

画面奥には、雷雨が近づく空と町の風景が描かれています。人物の背後に広がるこの風景は単なる背景ではなく、最初期の風景画の1つとも評されています。

解けない謎の主題

この絵画を「嵐」と説明する当時の信頼できる文献は見つかっておらず、何が描かれているのか記録も残っていません。『マタイによる福音書』の「エジプトへの逃避」、ギリシア神話のパリスとオイノネ、古代ギリシアの牧歌的な物語など、様々な解釈が今も並立しています。研究者サルヴァトーレ・セッティスは、荒れ果てた町並みをエデンの園、男女をアダムとイヴ、乳児をカインと見立てる説を唱えました。ジョルジョーネ自身がこの絵に特定の意味を持たせていなかったとする見方もあります。

描き直された痕跡

X線による解析で、現在男が立っている場所にはもともと裸婦像が描かれていたことが明らかになっています。男の背後に描かれた柱は力の象徴とされることもありますが、この柱は壊れており、古典的な解釈では死を意味します。画面中央やや右の建物の屋根にはコウノトリらしき鳥が描かれており、これは両親の子への愛情を示唆するとの指摘もあります。

風景画の先駆け

人物像の背後に広がる風景は絵画の単なる背景にとどまらず、最初期の風景画の1つとされ、このジャンルの発展に大きく寄与しました。緑と青で抑制された色調と、穏やかな雷の表現がもたらす静謐な雰囲気は、現在でも見る者を魅了し続けています。この絵はマネの『草上の昼食』に影響を与えたとする研究者も多くいます。

よくある疑問

『テンペスタ』はどこにある?

ヴェネツィアのアカデミア美術館の所蔵です。ヴェネツィア貴族ガブリエーレ・ヴェンドラミンの依頼によって描かれました。

何が描かれている?

杖を持つ男と、乳児に授乳する半裸の女性が、近づく嵐の空の下で描かれています。しかし当時の信頼できる文献にこの絵を説明したものは見つかっておらず、正確な主題は今もわかっていません。

なぜ「テンペスタ(嵐)」という名前?

画面奥に近づく嵐が描かれていることに由来する後世の呼び名です。制作当時に画家自身が付けたタイトルではありません。「エジプトへの逃避」やギリシア神話のパリスとオイノネなど、様々な主題説が唱えられています。

X線調査で何がわかった?

現在男が立っている場所には、もともと別の裸婦像が描かれていたことが判明しています。制作の途中で構図が変更されたことを示す発見です。

基本データ

作者
ジョルジョーネGiorgione
制作年
1506〜1508年頃
種別
絵画
技法・素材
油彩、カンヴァス
寸法
83 × 73 cm
様式
盛期ルネサンス
所蔵
アカデミア美術館(ヴェネツィア)

ジョルジョーネのほかの作品

《眠れるヴィーナス》

出典・画像について

画像: Wikimedia Commons(Public domain)。元ファイル

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